二人だけの滝7
「マナミ、帰ろう。河野も」
ショータの誘いで、三人で帰ることにした。
「河野って好きなヤツとかいるの?」
ショータはマナミが聞きたくて、聞けなかった質問をした。
「まぁね」
ミホはさらりと答えた。
ウソ――。河野さんに好きな人がいるなんて。
「中島さん、さっきウソみたいな目で見たでしょ?」
やっぱり河野さんは鋭い。
「クラスのヤツとか?」
ショータはそれにも構わず、質問を続けた。
「本田君」
ミホが顔が赤くなっていくのに気付いた。
やっぱり河野さんも中学生なんだ。
マナミは自分よりずっと年上に見えていたが、赤くなったミホを見ると、可愛く見えた。本田君というのは本田貴史のことでバスケ部員のショータの親友だった。
「河野、顔真っ赤だぞ。そうだ。滝に寄って、水で冷やしたら?」
そして、三人で滝に向かった。ショータとは何回か来ているが、ミホも一緒なのは初めてだった。
夏休みの間にショータとはいろいろなところへ行った。夏休みの最後のイベントに夏祭りがあったが、コートのすすめでマナミはショータではなく、ユミと行くことにしていた。
「ミサトはリホちゃんと行くんだって。コートにーちゃんはバスケ部員とだし、ユミねーちゃんはあの人と行かなくてよかったの?」
マナミはなるべく明るい声で言った。
「行くわけないでしょ」
ユミはショータのことが忘れられず、シンタローとはそのまま別れてしまっていた。
「あっ、河野さんもお姉さんと?」
マナミはミホとミホの一つ上の姉の真穂を発見した。
「だって、行く人がいないもん。リホはミサト君とだし――」
どこかでショータの声が聞こえたが、ミホとの話に夢中でマナミは気付いていなかった。マナミに近づこうとするショータの手を引っ張ったのはユミだった。
「あれ? ユミねーちゃんがいない」
「話すぎちゃったかしら。ごめんなさい」
マナミは河野姉妹と別れて、ユミを探した。
あっ、こんなところにユミねーちゃんがいた。なんでショータと?
これがマナミをこれまで以上に悲しくする出来事とは気付いていなかったが、邪魔をしてはいけない雰囲気でその場を立ち去った。