二人だけの滝6
「山村君、受験勉強の息抜きに遊園地でも行かない? 妹がチケットもらったの」
ショータは向こうにいるカップルの話に耳を傾けた。
「いいね、大歓迎だよ。期末終わってからでもいい?」
もちろんと答えるユミを見て、ショータは小学校の記憶がよみがえってきた。
あの頃と変わりなく、マナミにそっくりだ。おかしい感じには見えないけど。
期末テストが終わってすぐの天気のいい日を選んで、マナミとショータは遊園地に出かけた。そこにはユミとシンタローの姿もあった。
「ショータ、あれ乗ろう」
「最初からジェットコースターはちょっと――」
「もしかして、怖いの?」
「別に」
ショータは小さい頃に遊具で頭から落ちて、大ケガをしたことがあって、落下するのにトラウマがあったが、マナミに圧されて、ジェットコースターの列に並んだ。
「中島さん、ジェットコースターなんてどう? ココの怖いっていうし」
シンタローはユミの様子を伺った。
「あっ、ユミねーちゃんだ」
何人か後ろに並ぼうとしているユミ達に気付いて、マナミは叫んだ。
「混んでるから、違うのからにしましょ」
マナミの声が聞こえたユミは慌てて、シンタローに伝えた。
「中島さん、さっき妹さんと一緒にいた男の子のことが好きなんでしょ?」
観覧車の中でシンタローは口を開いた。
「えっ?」
「中島さんのことが好きでずっと見てれば、分かるから、オレと無理に付き合おうとしなくていいよ。中島さんが無理してるところを見ると、辛くなるだけだし」
「ユミねーちゃんがあーなったの私のせいかな?」
マナミ達もそのことについて話していた。
「何言ってるだよ。この前見た時はすごく元気そうだったし、マナミも元気出しな」
「マナミ、またショータとどっか行ってたのか?」
マナミが帰ると、久しぶりに部活が休みで家にいるコートが言った。
「何かあったの?」
「ユミねーちゃんの次はミサトの様子がおかしいんだ」
「どういうこと?」
「河野の一番下の妹知ってるだろ?」
「リホちゃんだっけ?」
「ミサト、その子のことが好きなんじゃないかと思って」
「まさか、この前なんか顔も見ないで、帰っちゃったんだよ」
「恥ずかしいだよ、きっと。とりあえず様子聞いとけよ。そうしないと、今日の晩飯にも影響しそうだから」
「――ってコートにーちゃんが言ってたけど」
マナミは一応そのことを聞いてみた。
「だから、何だって言うの?」
「私、河野さんと友達だし、協力できるかと思って」
ミサトは少し考えていた。
「河野さん、リホちゃん元気?」
次の日学校に行ったマナミは聞いた。
「学校行きたくないって言ってたから、心配してたけど、前よりよくなったわ」
「そんなに元気なかったの?」
「うん。だけど、それは中島さんのせいじゃないから」
「ミサト、リホちゃんのことが好きみたいなの」
「あのミサト君が?」
マナミは頷いた。
「リホもきっと喜ぶわ」