二人だけの滝5
次の日、マナミも学校に行きづらくなっていた。作戦は大失敗の上にミサトを追いかけて、そのまま家に帰ってしまったのだから。
「河野さん、昨日はごめんなさい」
「あぁ、いいのよ。いい経験になったわ」
ミホは思っていたほど怒ってなかった。
「ユミの妹って可愛いよね」
三年生の教室で女の子達が集まって、話していた。
「そうそう、バスケ部の一年生の子と付き合ってるんだって」
「えっ、それ誰?」
ユミは驚いて、聞いた。
「知らないの? 名前何って言ったっけ?」
「川口って言ってた」
前から予期はしていても、マナミがショータと付き合っているなんて信じられない。私はマナミより前からショータのことが好きなのに、妹なんかに取られたくない。
「中島さん、よかったら、中庭でも」
近頃元気がないユミを心配して、山村慎太郎は声をかけてきた。シンタローはユミのクラスメートでいろいろ話を聞いてくれ、ユミと付き合いたいことを告げた。
ユミは悲しさの余り、何も知らないシンタローにOKを出したが、それでもショータのことが忘れられないでいた。それは鈍感なマナミでも分かるほどだった。
「最近ユミねーちゃんがおかしいだ」
「おかしいって? 三年生なんだろ? 受験勉強で疲れてるじゃない? 去年受験生だった兄貴もそうだったし」
ショータは遊園地のチケットがあるから、これで二人で楽しんでくるように言った。
「四枚あるから、本当は河野とバスケ部の本田とマナミの四人で行こうと思ってたけど、二人でなら、また行けるし」
「ありがとう」
今日も寝込んでるユミの部屋をマナミがノックした。返事がないので、マナミは部屋のドアを開け、ユミの様子を見た。
「友達から遊園地のチケットもらったんだ。一緒に行こうよ」
「友達って、誰?」
ユミはベッドの中で言った。マナミはショータのことをどう説明していいのか分からず、黙っていた。
「そーいうマナミ嫌い」
普段こういうことを言わないユミがはっきりとそう言った。
「なら、ユミねーちゃんが好きな人と行くといいよ。チケット、ココに置いておくから」
マナミはチケットを置いて、その場を立ち去った。




