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二人だけの滝4

帰る途中、マナミはミホから渡されたメモをもう一度見直した。それにはミホの作戦がびっしり書かれていた。


小学校五年生のミホの妹が同じ学年のマナミの弟のミサトのことが好きらしく、作戦があるのよとその紙が渡された。


それは明日の日曜日、学校で偶然会うという設定だった。「何も明日でなくても、月曜日でいいでしょ?」とマナミは言ったが、「こういうのは早い方がいいのよ」と返された。


マナミは協力するとは言ったものの、母が亡くなってからミサトは引きこもりがちだった。ただ勉強は好きなようで学校だけは例外だった。だからと言って、休日にわざわざ行きたがるわけがなかった。


マナミが家に帰ると、ミサトはキッチンに立っていた。

「お帰り、ユミねーちゃんが具合悪そうだったから、今日はオレが代わって――」


ミサトは料理もでき、小学校五年生にしてはしっかりしている方だが、愛想もよくないし、人から好かれるタイプではなかった。

「ねぇ、明日学校に行かない?」

「学校で何かあるの?」


「何かあると言えば、あるんだけど――」

マナミは返答に困っていた。

「そんなに困るだったら、行くよ。でも、何もなかったら、すぐ帰るから」

こんな鋭いミサトだが、優しいところもある。ミホの妹はそんなところを好きになったのかもしれない。


もしかしたら、ミホの作戦まで気付いているのかもしれないと思ったが、何がともあれ、明日学校に行ってくれることにマナミはホッとした。


次の日、ミサトは時間通りに支度していたが、寝坊して、準備ができてないのはマナミの方だった。

「ミサト、走っていくよ」

「走っていって何があるわけ? もしかして、オレが運動不足なのを知ってて、マラソンでもさせようと――」


「そ、そうよ。たまにはいいでしょ?」

マナミはそういうことにした。

「こんな季節にマラソンなんて」

ミサトは不満そうだったが、マナミについてきた。


「急なお願いで中島さん、無理だったのかしら」

学校ではミホと妹の()()が待ちくたびれてた。その時に二人はやってきた。


「あら、中島さん偶然ね。久しぶりに気分転換でもしようと思って、妹と滝の近くまで行こうとしてたところなの」

早速ミホの演技がはじまったが、走ってきた二人は息を切らしていて、それどころではなかった。


その滝はショータに初めて案内してもらった。そこを訪れた二人は仲良くなれるという噂があることもショータから聞いていた。


「そちら弟さん? 何年生?」

そこでミサトが口を挟んだ。

「そんなこと知ってるでしょ? マナミねーちゃんと河野さんの作戦、だいたい分かったから、もう帰る」


「待って、ミサト」

二人は来た道をそのまま帰っていった。


「明日、恥ずかしくて、学校に行けないよ」

リホが泣き出した。

「あんな鋭い子、やめた方がいいわ」

ミホは言い聞かせたが、リホはただ顔を赤くして、泣くだけだった。

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