二人だけの滝3
「中島さんって川口君のことが好きなの? いつも一緒にいるじゃん」
クラスメートの河野美穂がマナミに声をかけてきた。
「えっ、別に」
「とぼけなくていいのよ。好きなんでしょ?」
そう言われると、マナミはこっくり頷いた。引っ越してきてからから一ヶ月でマナミはショータのことが気になり出していた。
「そうだ。今度のバスケの試合見に来ない? 川口君もあなたのお兄さんも出るから」
「河野さんもバスケ部?」
「そうよ。でも、女子は人数が足りなくて、試合に出られるほどじゃないのよ。もしよかったら、中島さんも」
「それ、コートにーちゃんも言ってたけど、私、スポーツはダメで」
「大丈夫よ。みんなはじめたばっかりだし、女子は試合出られなくて、男子のマネージャーみたいなものだから、今度の土曜日応援に来て、決めたらいいし」
土曜日、マナミは約束通りに試合を見に来ていた。ユミもコートに弁当を持ってくるように頼まれていた。
やっぱりあの子、川口翔太だ。いつの間にかにこっちに来たんだ。でも、マナミとはどういう関係なの。
ユミは応援席にいるマナミに気付いた。
まさかショータに誘われたとか。違う、違う。絶対に違う。ショータは私のことが好きなはずだから。
「マナミがユミねーちゃんの代理で弁当持ってきてくれたの?」
ユミがなかなか弁当を持ってこないので、コートがマナミに聞いた。
「ううん、違うけど、ユミねーちゃんがたくさん作ってたから、残りもらってきた」
「うめーな」
ショータとコートはマナミが持ってきた弁当を食べた。
「これって先輩のお母さんが作ってくれたんですか?」
「いや、姉が」
「ふーん、お姉さんって料理上手いんですね」
美味しそうに食べるショータを見て、マナミは自分にはできないと思った。
「何で持ってきてくれなかったんだよ。マナミが来てたから、よかったけど」
コートは帰るなり、ユミを問い詰めた。ユミはショックも受け、弁当のことなんか忘れて、寝込んでいた。具合が悪いなら、仕方ないとコートは諦めた。
「どうだった? 中島さんも入ってみない? 中島さんのお姉さんの弁当、他の部員にも好評だったし、また持ってきてくれない?」
試合が終わって、後片付けしていたミホはマナミに聞いていた。
「弁当運びが役に立つなら」
「役に立つわよ。嬉しい。あっ、川口君、いい知らせがあるのよ」
帰ろうとしてるショータをミホは呼び止めた。
「中島さんが伝えたいことがあるんだって」
「えっ、何かあったっけ?」
「またとぼけて」
そのミホの言葉でマナミはこの前の会話がよみがえり、我慢できなくなって、「好き」と呟いていた。
「いきなりどうしたんだよ」
ショータもマナミの告白が分かったらしく、少し顔が赤くなっていた。
「オレも実は小学校の時に好きだった人に似てるなと思ってたところだったんだ」
「大成功、これで四組目、おめでとう」
そこでミホの声が聞こえてきた。
二人は驚いて、ミホの方を見た。
「これが私の趣味みたいなものなの。あなた達を見てたら、両思いだとすぐ分かって、くっつけたかったの」
「中島さん、後でちょっといい? 相談したいことがあるの」
「相談って?」
「五組目に挑戦するのよ」