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二人だけの滝2

その日、川口(かわぐち)(しょう)()は約束通りマナミに学校の近くのいろいろな場所を案内した。


「この坂キツいから、オレ達はジゴクザカって呼んでる」

「チコクザカ?」

「それってお前だけじゃないの? 今日もチコクしてたし」


「でも、行きも帰りも同じ時間配分で考えたら、誰でもチコクするから、ある意味そうだ。上りと下りじゃ全然違うもん」


通学路をなかなか覚えられないマナミはいつもはユミと一緒に通学していたが、今朝はユミが委員会の仕事があって、先に行ったので、初めて一人で向かって、遅刻した。


マナミはショータにいろいろな場所を案内してもらい、いいところかもと思い出すようになった。


「マナミ、遅かったじゃない? どこに行ってたの?」

ユミは心配して、聞いた。「ヒ・ミ・ツ」というマナミはやけに楽しそうだった。


ユミとマナミは小さい頃から仲良し姉妹で前の家では四畳半の部屋を二人で使っていて、秘密などできなかったが、受験勉強に集中できるようにと新しい家では自分の部屋が与えられていた。


「腹へったよ」

コートが部活から帰ってくると、キッチンに向かった。


「ミサト、またユミねーちゃんの手伝いなんかして、そんなのマナミにやらせればいいんだよ」

「マナミは今日もまだなの」

黙って、手伝いをするミサトの代わりにユミが言った。


「だいたいそんなの女がやるもんだろ? 名前からして、女みたいだし」

「お母さんも女の子の方がよかったって言ってたから、仕方ないじゃないの? マリンやセーラとか女の子っぽい名前、たくさん考えてたし」

ユミは海が好きだった母のことを思い出して、話した。


「そんな外国人みたいな名前、海と何が関係あるの?」

「コートも部活ばかりやってないで、少しは英語の勉強でもしたら?」

ユミは呆れて、言った。

「オレはバスケで高校行くから、そんなの必要ないの」


「そうだ。海に人と書いて、カイトとかどうだ?」

「タコは嫌だ」

そこでミサトはボソッと言った。


「別にタコとか言ってないよ。人だって」

「ミサトの方が分かってるんだから」

ユミはさっきと変わらない様子で言った。


「それにしても、マナミ遅くない?」

「帰ってきたのに気付かなかっただけで部屋で寝てるのかもしれない。私、見てくるわ」


やっぱりいない。このノート何だろう。


ユミはマナミの部屋に入り、机の上に置いてあったノートを手にした。


中を見ると、それは日記で川口君が――、川口君が――と書かれていた。


川口君って誰だろう。そう言えば、昔しつこい男の子がいたな。確かマナミと同級生なはずだけど、こんなところにいるわけないよね。


川口という男の子がつきまとうようになったのは三年前、ユミが小学六年生の時だった。そして、卒業式の前日、私を呼び出して、「好きです」と告白した。


「中学でまた会えるじゃん」と返したんだっけ。惜しかったな。あの子、カッコよかったから、今なら、彼氏にしてもよかったのに、転校するなんて考えてもいなかった。


「ただいま」

マナミの声で慌てて、ノートを閉じ、出迎えた。

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