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二人だけの滝1

中島家のマイカーが勢いよく坂道を上っていく。長女の()()は不安になってきた。その隣で眠っている次女の()(なみ)はそんなことにも気付いてなかった。


四月の晴れた朝、父と四人兄弟姉妹は新しい家に引っ越してきた。今まで住んでいたところは海のそばの港町だったが、今度は暮らすことになる家はそれとは対称的に山の中だった。


「ココ、どこ?」

マナミはまだ寝ぼけていて、現実が分かっていないようだった。


「新しいウチに着いたのよ」

ユミは優しく言った。


「こんなところからも海が見えるんだ」

長男の(こう)()が指を指した。次男の()(さと)はそれにも目に触れず、家の中に入っていった。


マナミは今度中学生になり、二つ上の姉のユミは中学三年生で受験生だ。兄のコートは真ん中の中学二年生で弟のミサトだけが小学生だった。


母が亡くなってからは父一人で四人の子どもを育ててきた。その四人が大きくなるに連れて、前のアパートでは狭くなり、少し離れたところに一軒家を借りた。


少ないの――これじゃ、一日で全員、覚えてしまいそう。あの子、どっかで見たことある。


マナミは入学式の間中、キョロキョロしていた。


「ユミねーちゃん、この学校好き?」

「いきなり何よ――好きに決まってるでしょ? マナミは嫌いなの?」

マナミは首を振ったが、本当のところ気に入ってなかった。


亡くなった母は海が好きな人で子ども達の名前も海に関連があるものだった。そんな母に逆らっているようでマナミは一週間経っても、この学校に馴染めずにいた。


みんなどーしてるのかな? 前の学校の方がよかったな。


「ココっていいところだよ」

後ろを振り返ると、入学式に目に入った男の子が立っていた。


「どこが?」

「今日連れていってあげるよ、いいところに。それよりどこから来たの?」

マナミが自分が住んでいたところを答えると、その男の子は驚いた顔をした。


「オレも去年そこから来たばかりなんだ。あんなに人がいたから、気付かなかったけど」


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