第6話 悲劇の始まり
ゼーフ人工島の埠頭にはそこらにあった材料でバリケードが築かれていた。その奥には剣や火炎瓶、角棒や鉄パイプなどを持ったウラク星人が固めていた。彼らは、ローク星の軍用宇宙船からは誰一人この島に入れさせないと決意していた。
やがて宇宙船が島に接岸した。そしてハッチが開いて多くの人影がその埠頭に殺到した。それはアームソルジャーだった。軍事用のバイオノイドともいえるそれは戦闘力がけた違いに高く、レーザー銃、レーザー拳銃、レーザーソードなどで武装していた。それらは宇宙船の司令室からコントロールされていた。
バリケードの前に一体のアームソルジャーが立った。それにはウラク星人に伝える言葉が司令室から送られてきていた。
「抵抗を止めろ。全員、おとなしくするのだ。反抗する者はもちろん、こちらの指示を聞かぬ者は反逆者としてこの場で死刑とする。バリケードをどかして出て来い。」
特徴ある機械語でウクラ星人にそう告げた。だがウクラ星人はそんな要求に屈することはなかった。
「俺たちはここを動かねえ! お前たちの言うことなんか聞くものか!」
「そうだ! そうだ!」
ウクラ星人たちは気勢を上げた。彼らはローク星人には屈しないという気概でこの場に臨んでいた。だがローク星側の司令官のプロム将軍はその光景を司令室のモニターから見て残酷な笑いを顔に浮かべた。
「ならば目に物を言わせてやるだけだ! 作戦開始! その辺りにいるウラク星人どもを抹殺せよ!」
彼はそう命令した。それをそばで聞いていたマース艦長が慌てて横から言った。
「少しお待ちを。少し脅すだけで必ずこちらに従うはずです。強硬な手段はそれからでも遅くはありません。」
「何を甘ったるいことを! ここで見せしめにしなければどうする!」
プロム将軍は椅子のひじ掛けを叩いた。しかしマース艦長は退かなかった。
「それは脅すだけで十分かと。我らはここにいるウラク星人を引き取ることを命令されています。虐殺など許されておりません!」
「何を! 命令を聞けぬのか!」
プロム将軍はマース艦長を睨みつけた。彼はそれに真っすぐに向いて意見した。
「これ以上、血を流してどうします? 銀河帝圏の首脳部からウラク星との和解をするように圧力がかかっていると聞いています。このような時にこのようなことは許されるはずはありません。命令を撤回していただきます!」
「貴様、反逆するのか!」
プロム将軍は大声で怒鳴った。それに対してマース艦長は毅然とした態度を取っていた。
「私は自分で判断して正しいことを申し上げているのです。これに賛同する者はおります。」
マース艦長はそこから少し離れて直立の姿勢を取った。すると司令室の半分以上の者が席から立ち上がってマース艦長と並んで直立の姿勢を取った。マース艦長と同じ意見を持つ者がかなりいたのだった。彼らはウラク星人への扱いに、いやウラク星の侵略を快く思っていなかったのだ。
「貴様ら! これほどまで馬鹿がそろっておるとは! ならばもうよい! 全員を逮捕して牢に叩き込め! 反逆罪として死刑にしてやる!」
プロム将軍は怒りで体を震わせながらそう大声で言った。すると部屋の外から兵士がなだれ込んできた。彼らはマース艦長をはじめ直立した幹部たちを連れて行った。その後の司令室はがらんとしてごく少数の者たちだけ残った。
「くそ! 軟弱者たちめ!」
プロム将軍はそう呟きながらも、何とか怒りを抑えて命令を下した。
「さあ、やれ! ウラク星人どもを抹殺するのだ。この島にいる者どもすべてを殺してもかまわぬ!」
その命令は司令室から現場にいるアームソルジャーたちに伝えられた。ついに恐るべき事態が始まってしまったのだ。