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アレス ~英雄の帰還~  作者: 土屋俊太
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最終話 帰還

地球のオリンピア市民たちは地下シェルターに避難するために路上にあふれかえっていた。

彼らは夜空で鈍い光を放つダイモス星を見上げていた。

連合軍の兵士たちが警笛を鳴らして市民たちの避難誘導をしていた。

「皆さん、慌てないで!」

「シェルターにはまだ十分な空きがあります!」

市民たちは兵士たちに詰め寄った。

「おい、ちっとも進まないじゃないか!」

「小惑星が落ちてくるって本当なのか!?」


アレスは深く息をついて操縦桿を握りしめた。

ヘルメスがレーダーを指差した。

「見て、誰かが待ち伏せしてるみたいだよ!」

へパイストスがモニターに映し出された。

「アプロディテ…どういうことだ!?」

アプロディテは顔をひきつらせた。

「げっ…何であいつがいるの?」

アレスは反物質エンジンのレバーを引いて出力を限界まで上げた。

「このまま突っ切るぞ!」

テュポン戦闘機は宇宙を切り裂く光のようにヘパイストスの前を駆け抜けていった。

アレスはダイモス星に迫るとミサイルの発射ボタンを押した。

ミサイルはダイモス星を貫きその星の奥深くで大爆発を引き起こした。

へパイストスは眩い閃光と共にダイモス星の破片に飲み込まれていった。


兵士たちはオリンピア市のシェルターから出てきて夜空を見上げた。

ダイモス星の破片は流れ星のようにきらめいて散っていった。


ヘルメスは目を輝かせてダイモス星の破片を見つめていた。

「はは、すげえや。あんなでかかったのがこっぱみじんだ」

アプロディテはアレスの脚の上に座り口づけを交わしていた。

ヘルメスはそれを見て頭をかいた。

「未成年がいるんだけどな」


月面基地の隊員たちは月から遠ざかっていくフォボス星を眺めて大歓声を上げていた。


ハデスはかつてタルタロスと呼ばれていた火星のマリネリス渓谷にいた。

墓標が砂嵐が吹き荒れる渓谷の前に立っていた。

ザクロの実が花束の代わりに墓標に手向けられていた。

クロノスが墓標の前にたたずむハデスの背後に立っていた。

「やはりここにいたか」

ハデスはクロノスを振り返った。

「久しぶりだな…父さん」

「ぺルセポネが恋しいか」

ハデスは何も答えなかった。

クロノスはハデスの横に歩み寄った。

「時計の針は元には戻らない。私が死と引き換えに学んだ事だ」

ハデスは墓標を見つめていた。

「元に戻らないなら壊すまでだ」

ハデスはそう言って墓標の前から立ち去った。

砂嵐が彼を飲み込み消し去った。


アレスはオリンピア市のレストランにいた。

ゼウスが店の中に入ってきてアレスがいるテーブルの椅子に腰かけた。

「遅くなってすまん」

「いや、俺もさっき来たとこだよ」

「そうか」

レストランの店主が二人に恭しく頭を下げ水が入ったグラスを置いた。

「いらっしゃいませ。ご注文はいかがいたしましょう」

ゼウスは人差し指を立てた。

「ああ、私はいつものを頼む」

「かしこまりました」

ゼウスはメニュー表を見ているアレスにたずねた。

「お前はどうする?」

「じゃあ同じ物を」

「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」

店主はそう言って引き下がっていった。

ゼウスは水を一口飲んでアレスにたずねた。

「久しぶりの火星はどうだった?」

「やっぱり前にも行ったことがあるんだね」

「ああ、お前が赤ん坊の頃にな」

「あのクロノスという人は何者なの?」

「その話は長くなるぞ」

「時間ならたっぷりあるさ」

アプロディテとヘルメスが隣のテーブルから移ってきた。

アプロディテはゼウスの腕を抱き寄せた。

「叔父様、私たちもお仲間に加えてくださらない?」

ヘルメスはカメラを構えた。

「皆こっち向いてよ!」

アレスとゼウスは顔を見合わせほほえんだ。


クロノスとヘラクレスはオリンポス山の頂上で星々を眺めていた。

クロノスはヘラクレスに問いかけた。

「ヘラクレスよ、太陽系の外には行った事があるか?」

「ウーン…ナイ!」

「私と一緒に行ってみないか」

「ウン、イク!」

「よし、ではさっそく準備に取りかかるとするか」

ヘラクレスはクロノスの周りを飛び跳ねた。

「イエーイ、ジイチャントイッショニウチュウリョコウダ!」

彗星が夜空を駆け渡っていった。

若い芽がトロイア市跡のご神木に芽生えていた。


終わり

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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