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人がいた



涼しい風が、頬を撫でる。



肌に張り付く汗を吹き飛ばすような風がハルカの身体を突き抜けて、心地いい気持ちよさが駆け巡る。



「なんとか、逃げ切れたってことなんかなぁ。」




ハルカは倒れて気絶し、目が覚めたことを幸運に思うと同時に。


なんとかしてこの森から出て街か何か安全なところで戦力を高めていかないとマジで死ぬと考えていた。



「いやね、もうこれさ。ぽっとでの学生なんかにどうにかできるレベル超えてるよね。」




独り言で愚痴を呟いても、助けてくれる人はいない。



あぁ、無情。


その言葉の通り、今のままなら100%ハルカは死ぬならだ。




「小難しいこと考えても仕方ないよなぁ、とにかく人か街を探さんと。」



ハルカはなるべく早く人や街を見つけるために動き始めることにした。




「せめてなぁ、魔力とかわかってさぁ。魔法とか使えたらまだ安心なのになぁ。」




ハルカは未だ魔力を感じるどころか存在があるのかすら不明だった。




「結局、最後は努力と根性って。一昔前の社畜じゃないんだからさぁ、今時ブラック会社でも新人研修はしっかりしてるよほんと。」




悲観してもも仕方ないと、重くなってる腰を上げて歩き始めたハルカ。



まずは川を見つけてそこを下ることで街に着くのではと浅い知識をもとに歩き始めた。



ここは山ではないし、森だし、なんならキノコとかキノミとか有れば生きてけるよね?



なんて言う浅い希望も持っていた。




「お、川だ!!」



ハルカは歩いて約20分くらいだろうか、川を見つけることに成功した。



「川の水飲みてぇ、けどなぁ・・」




生で川の水を飲むとお腹を壊す、そんなのは遊び呆けていた大学生のハルカでもわかることだった。



火もない、濾過装置もない、なんなら水を溜める容器すらないハルカにとって。



目の前の水を飲めない、飲みたいのに飲めないと言うことが辛く重くなってきた。




「ま、とりあえず進もう。日が暮れてからだと足元もまずいし、水場は獣も使うだろうしね。」




一般的な思考、特別な知識もないハルカにとって立ち止まることは死を意味していた。


もちろんハルカはそんなこと気付いてない、単純に止まったら不味いよなぁレベルだ。




「しっかしさぁ、デケェ森だなぁ。」



「まるで富士の樹海だよ」




富士の樹海に行ったことはない、しかし大きな木々に囲まれて歩き続けても終わりが見えない様は樹海といって差し支えは無かろうとハルカ思った。



「うん?この焦げ臭い感じ!!もしかして!!」



ハルカは走った、とにかく走った匂いの素を探しに






「ハァハァッ!どこだ!!」




やっと見つけた、火の気配。



人類の叡智、火の周りには必ず人間の痕跡があり。



もしかしたら人間そのものがいる可能性が高い。




「あ、あれは!?」




しばらく走ると、煙が見えた。




するとそこには男が2人、女が2人の明らかに武装した一団が焚き火を囲っていた。




「これ、盗賊パターンとかあるかなぁ」



そう、異世界転移してまもないから異世界事情は知らないが。


安定した秩序のない中世期が基本の異世界では盗賊は比較的ポピュラーなロールだ。



もしここで助けを求めてみたときに相手が盗賊で奴隷として売られたり、最悪殺される可能性もある。



「でもなぁ・・」




しかし、どのみち森にいたら死ぬであろうハルカにとって盗賊もさっきの化け物クマ公も同じもんだ。



だったら、まだ良い人たちである可能性に賭けて話しかける方がまだ確率がある。




勇気を出して話しかけないで見過ごしたとして、次に人に会えたとき会えるまでに自分が生きている自信がない。




「あのぉ、すいません。少しお話しよろしいですか?」



意を決して話しかけたが、そもそも言語は通じるのだろうか??



「誰だ・・、貴様。」



キラリと光冷たい光が首筋に伸びた、ナイフのようなものを首筋に当てられているのだ。



「あ、あ、あ、のですね!俺は、私は!旅のものでして!道に迷ったので街まで送って欲しいと思いながら話しかけたんですよね!はい!」



目の前にいたはずの男の1人がいきなり視界から消えて、急にクビにナイフらしき刃物を当てられてるのだ。


怖いに決まってる。




「リーダー、こう言ってるがどうする?俺は始末して良いと思うが。」




「まぁまてクロウ、見たところ武器もねぇ。魔力を操ってる感覚もねぇ、なんなら荷物すらねぇ。道に迷ったのと無力なのには違いねぇさ。」



「なら、解放してやるのか?俺はまだ旅人のフリをした盗賊の線が抜けないのだがな・・」



「そんなに言うもんじゃないわよ、どう見たって無害な男じゃない。盗賊にしては清潔感があるし、見た感じ森に入ってまだ2日も経ってないわよその男。」




どうやら目の前でハルカの今後を担う話し合いが軽く行われてるようです、もう気が気じゃないハルカ。




「しかたない、手を頭の後ろに組んでゆっくり前に出ろ。少しでも余計なことをしたら首を刈る。」



「は、はひ!!」




慎重に、万が一もないように、ゆっくりと行動するハルカ。




ようやく一団の周りにつき、膝を立てて目の前のリーダーという男の前に来た。




「よぉ、旅の人。俺はこのパーティーを率いるランドルフってもんだ、あんたの名前は?」



「俺は、ハルカって言います。」




「そうかい、この近くにある城塞都市ヴァインと言うギルドから来たんだがな。ここら辺には盗賊も出るし深いところには危険度Cの魔獣も出てくるからな。武器もなしに入るなんてこと普通はないんだが。」



「あんた、どうしてここにいる?」




「いや、あの。話せば長くなるんですけどね・・」



ハルカは異世界転移のことを隠しつつ、うま〜い感じに話しの辻褄を合わせてみた。



「ほぉ、村を追い出されて身の着1つで街まで行こうとしたら迷ったと。よければ城塞都市まで行きたいと、そういうことだな?」



「はい!そうなんですよランドルフの旦那!」



それはもう見事なゴマスリ、哀れを超えて神々しいほどの姿勢でした。



「なぁクロウ、とりあえずよこいつヴァインまで連れてくぞ。以来の魔物は倒したし、盗賊も見つかりそうにないしな。お前ら!引き上げだ!!」 



ランドルフがそう言うと各員迅速に行動に移してあっという間に出発の準備ができてしまった。



「まぁ、とりあえずいくか!ハルカ!」




俺はその時のランドルフさんの笑顔を忘れることができない、それほど裏表のない笑顔だった。



こうして、ハルカは異世界で初めて会った人間たちに連れられて城塞都市ヴァインへと歩き始めた

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