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聖鎧ザンヴァイル 少年たちの戦場  作者: 原作・氷川輝/著・進藤雄太
第一章
7/29

第七話 少年たちの日常2

 数日後、午前中のうちに終業式を終えると、全校中が待ちに待った夏休みモードに移った。


 「ヒロ兄、一緒に帰ろう!」


 毎度のように来霧が比呂弥の教室を訪れると、クラスメートはニヤついていたが、気にしないように比呂弥は教室を出て、いつものように来霧と一緒に帰路についた。

いつも一緒に帰ろうと言ってくる猛は、今日に限っては珍しく別行動であった。


 「明後日からだね、家族旅行!」

 「そうだな」

 

 比呂弥の家は父親が科学者をしている関係で休日が一般人と比べて不安定であった。

 しかし、今年は休みが取れたということで久しぶりに家族旅行に行くことになっていた。

 比呂弥も口には出さないが、久しぶりに家族全員で過ごせるこの旅行を、とても楽しみにしていた。

 


 *



 高校からの帰路の途中に、その家はあった。

 何の変哲もない一軒家であったが、道路から見える広い庭に大きなサンドバッグが備え付けられている。

 他にも藁を巻いた木の板や、恐らく筋力トレーニングに使うと思われるダンベルなどが転がっている。

 

 そのサンドバッグに威勢の良い声とともに突きや蹴りを繰り出している少女がいた。

 外の道路から丸見えの庭に向かい、来霧が少女に声をかけた。


 「おーい、まり姉―っ!」

 

 まり姉――結城真理香は、比呂弥より一つ年上のお姉さんだが、小さい頃から一緒に遊んでいた、いわゆる幼馴染と言った関係であった。

 茶色がかったセミロングの髪は少し癖っ毛が混じっており、暴れないように前髪をピンで止めてある。

 温和そうな少し垂れた瞳を飾るようにかけた眼鏡がチャームポイントの、素朴で可愛らしい少女である。


 「来霧ちゃん、ヒロ君! 今帰り?」


 比呂弥たちに気づいた真理香は稽古を中断し、タオルで汗を拭いながら近づいてくる。少し崩れた胴着の隙間から汗ばんで張り付いたTシャツにうっすらと映る肌に、程よい膨らみの胸元が垣間見え、比呂弥は目のやり場に少し困ってしまった。


 「うん! 今から旅行の支度をするんだよ!」

 

 来霧が元気に答え、真理香は「そうなんだ」と笑顔を向ける。


 「まり姉は今日も稽古?」

 「まあ日課だからね。体動かしてないと落ち着かなくて」


 比呂弥の問いかけに真理香ははにかみ笑う。

真理香の父親である結城総一朗は、今は亡くなってしまった比呂弥の母である瀬尾明子の兄にあたる人物であり、父親である瀬尾浩介とは同じ科学者仲間であった。

 家もお隣同士であったため、物心つく前から一緒に遊んでいた。

 そのためかよく空手の練習台にもされていたことを比呂弥は何となく思い出した。


 「ねえ、まり姉はもうアレ、用意した?」

 「アレ?」

 

 来霧の問いに比呂弥が首をかしげる。


 「実はまだなの。去年のはもう小さくて無理そうだから新しいの買わないとなんだけど」

 「なんの話?」

 「水着だよ水着。せっかく海に行くんだもん、可愛いの持って行かなきゃね」


 来霧がからかうように言った。

 ちなみに、今度の家族旅行も一緒に行くことになっている。

 

 「じゃあ一緒に新しいの見に行こうよ!」

 「いいわね。ヒロ君も来る? 良ければ一緒に選んで欲しいな」

 「ぼ、僕はいいから、二人で行ってきなよ」


 まり姉の水着か……。比呂弥の頭の中に水着姿の真理香が登場する。可愛らしくも大人びたビキニ姿で、発育した胸元に空手で鍛えた腰回りのくびれがなんともセクシーに……。


 「あ~、ヒロ兄ってば赤くなっちゃって。私たちの水着姿想像したでしょ、エッチ」

 「しし、してないってば!」

 「本当に~?」

 「本当に! ほらいいから、早く支度しないと終わらないぞ!」

 「ふふふ」

 

  微笑ましい二人のやり取りに真理香もつられて微笑む。


 「それじゃあ来霧ちゃん、また後でね」

 「うん!」


 そう言うと真理香は着替えるために家の中へ戻っていった。

 真理香の家の隣が比呂弥たちの家である。来霧は元気に「ただいま」を言うと一目散に自分の部屋へ着替えをしに向かう。

 比呂弥も、早く制服を脱いで身軽になろうと、自分の部屋へ入っていった。




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