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きみにとって  作者: つんく
6/10

 夢を見た。いつものように真っ暗な場所に俺はいた。いつものように、重く、苦しい。



 (はあ…またこれか…出口…)



 何度もそんなことを思ってきたが、そんなもの見当たらなかった。


 諦めて闇に身を任せる。すると、何かが手に触れた。



 (ん? なんだろうこれ…)



 そう思って、その何かを握る。手だ。誰かの手だ。無意識にその手を強く握った。ここから連れ出してくれるんじゃないか、そんな気がした。



 すると俺はその手に強く引っ張られた。引っ張られた先で肌に布のようなものが張り付き邪魔をする。手はその布のような何かから俺を引っ張り出す。


 そしてついに、その布が破れた。その瞬間、切れ目から光が漏れる。眩しくて、思わず俺は目を閉じた。





 地面を感じる。どこかにいるらしい。



 「ねえ! あれ気になる! ちょっと見てみようよ!」



 (ん…? 誰だ…?)



 ゆっくりと目を開ける。明らかに訪れたこののない場所。緩やかな石段が続き、その両側にはいくつもの出店が軒を連ねている。お店に沿うように上には赤い提灯も連なっている。



 「ねえ! 聞いてる?」



 声のほうに目を向けると、女性が立っていた。そのとき、あの日のことを鮮明に思い出した。


 追い詰められ、死ぬことも考えていた自分に声をかけてくれた、セミの鳴き声がする公園でブランコに座って一緒に話をした、あの女性だった。



 俺は1ヶ月ほどの期間で彼女のことを忘れかけていたのだ。彼女に会えないもどかしさもあった。彼女の存在を忘れようとすることで、俺は無意識に寂しさから自分を守っていたのかもしれない。



 「え…どうして…。」



 「どうして? 今日は一緒にお出かけしてるんでしょ?」



 「ああ、そうだったね。」



 そんな記憶はもちろんない。だが、この時間をもっと過ごしたい…。そんな思いから話を合わせた。



 しばらく歩いてみると、そこはどうやら日本ではないらしい。ただ、そこにいる人達の顔立ちは日本人のそれに近い。


 出店の店員もそうだったが、日本語ではない別の言語を話している。



 「これ美味しそうじゃない? 食べてみようよ!」



 「うん、そうだね。」



 まるで恋人のような会話をして出店を練り歩き、色んなものを食べた。味はよく分からなかったが、彼女と久しぶりに会えたことがとてもうれしかった。



 「見て見て! ここから見た感じとかまさにアニメのままって感じだよ!」



 彼女の隣に立ち、同じ方向を見ると、赤い提灯が等間隔に吊られ、だんだんと下に下がっていく景色が見えた。たしかに、昔何かのアニメで見た気がする。



 「ほんとだ、すごいね…」



 「でしょー? ほんと一緒に来てよかったよ。」



 しばらく歩くと少し開けたところに出た。辺りには山々が連なり、ここと同じようにお店が集まった場所を所々に確認できた。



 その景色を彼女と並んで見渡す。


 なんて開けた、広大な景色なんだろうか。隣の彼女にふと目をやる。少し口角を上げ、再び一緒に景色を見る。幸せな時間だ。ずっと続けばいいのに……。


 そう思いながら彼女を再び見ると、だんだんと明るくなってきた。光が徐々に大きくなり、眩しさが増していく。





 目を開けると、そこはベッドの上。窓から光が差し込み、とても眩しい。夢か…。


 だが、俺はとてもうれしかった。彼女のことをはっきりと思い出し、今度こそまた会いたいと心から思った。


 そして、夢ではあったが彼女との時間が終わってしまったようで、少し寂しさを感じていた。

設定というか裏話。


前話のラスト、俺はだんだんと彼女とのことを忘れているようでした。

それはどれだけ探しても会えないことであのときの記憶ごと消してしまって寂しさを紛らわせようとしていたからでした。


夢に人が出てくる時って、その人を忘れかけてるときらしいですよ。脳が記憶を保とうとしているのでしょうか。雑談でした。

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