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きみにとって  作者: つんく
4/10

もう一度。

 窓から朝日が差し込み、俺は目を開けた。



 (朝か…)



 普段はカーテンを締め切って寝ていたが、昨晩は外を見るためにカーテンを開け、そのまま寝てしまっていたらしい。



 昨晩のように自室の窓から外を見渡すと、闇夜をぽつんと照らしていた街灯はその光を消し、ひっそりと立っていた。



 (明るくなったから必要ない…)



 そんな変なことを考えてしまう。



 リビングへ向かうと誰もいない。両親は共働きで、俺が起きるころにはもう仕事に出ている。正直、最近はほとんど会話した記憶がない。こんな俺にかける言葉が見つからないのだろうか…よく分からない。



 いつも通り適当に朝ごはんの支度をした。スマホをいじりながらご飯を食べる。SNSを覗くと、友達は写真とともに夏休みを満喫している様子をアップしていた。



 「昨日はめちゃくちゃ楽しかった! やっぱり学生最後の夏休みはこうでなくっちゃ!笑。あ、もし暇な人いたらいつでも連絡して! 思い出作ろう!」



 いつもならとくになんの感情もなく、いいねを押して画面外へスクロールして投稿をどこか遠くへ追いやる。


 だが今日はいつもと違い、その投稿に感情を抱いた。


 嫉妬ではない、むしろ優越感のようなものを感じていた。



 この写真はたしかに楽しそうだった。みんな同じような笑顔で四角形の中にひしめき合っている。


 ただ、この中にいる時間より、彼女と喋った時間のほうが絶対に楽しいと確信していた。



 そして脳裏に彼女の顔が思い浮かぶ。もう一度会って話をしたいな。今日は時間あるのかな…。


 そんなことをいつの間にか考えながら、友達の投稿にいいねを押した。





 俺は身支度をし、家を飛び出した。彼女もここら辺に住んでると言っていた。ならたまたま会う可能性もある。


 そう淡い期待を抱きながら住宅街を歩く。だが、そんな都合のいいことは起こらない。昨日彼女と歩いた道を歩く。同じ場所を歩いているのに、荒波にもまれる船のように、前へ進むのがとても重たく感じた。



 昨日の公園に目を向けると、今日は誰もいない。昨日の子供たちは、今日は誰かの家で遊ぶことにしたのだろうか。


 公園に足を踏み入れる。昨日と同じ調子で、俺の足踏みに合わせて砂が擦れ、音を奏でる。



 昨日と同じようにブランコに座った。隣りを見ると、誰も座っていないブランコがどこか寂しげに風に揺られていた。



 試しにブランコを漕いでみる。持ち手の金具が擦れる音と共に、俺をだんだんと高い場所へ押し上げる。



 (懐かしいな…)



 耳には風を切る音が入ってくる。





 しばらくして、ブランコを漕くのをやめた。


 セミが鳴いているが、どこか静かで寂しい。彼女はここには来ないのかな…。


 そのときふと、最初に出会った場所を思い出す。



 (行ってみるか…。)



 俺はあの小高い山に向かってみることにした。





 生い茂る木々の葉が揺さぶられ、かさかさと音を発する。その動きに合わせるように木漏れ日がうごめく。


 しばらく歩くと開けた場所。いつものように変わらぬ住宅街を俺に見せてくる。



 (…いない…か…。)



 そこにはいつものように俺一人だけがいた。

その場に座り込み、住宅街を眺める。


 先ほどまでいた公園も見える。あそこからここまで歩いたんだな…なんか不思議な感じだった。



 そんな調子でしばらくとどまったが、彼女どころか、いつものように誰もそこへ来ることはなかった。

設定というか裏話。


ぜひ、“彼女”と初めて歩いて来たときの描写と比べてみてください。

少し表現豊かに情景が描いてあると思います。


“俺”の気持ちに少しずつ変化が起きていることを表現しているつもりです…。

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