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slapstick fantasy ~王都外れの幻想動物園~  作者: 猫正宗
第3章 潜入!レッジャーノ幻想動物園
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06 バジリスク戦決着

 戦いの形勢が、徐々にバジリスクに傾き始めた。

 勢いづいた蛇の王が猛攻を仕掛けてくる。


 一方の俺は、苦しみに悶えていた。

 情けないことに、魔王の力を抑え込むだけで精一杯の有様だ。


 これではバジリスクの攻撃を、ろくに捌くことすら出来やしない。


「ぐぅ……。おのれ、こんなはずでは……」

「キシャアアアアアアアアアアアアアア!」


 バジリスクが地を這うように突進してきた。

 大きな口がすぐ目の前で開かれる。


「ちぃ……!」


 身をよじってなんとか噛み付きを躱した。

 回避に気を取られた瞬間、意識を黒い悪意が塗り潰そうとしてくる。


(殺す……、殺してやる……)


 目の前のこいつを八つ裂きにしたい。

 胸の奥から湧き上がる凶悪な破壊衝動に、身を任せたくなる。


「ち、違う……っ! これは俺ではない。こんな悪意など、お呼びではないのだ!」


 かぶりを振って歯を食いしばった。

 正気を保とうと耐える。


 いまの俺は隙だらけだろう。

 だがわかっていても身動きが取れない。


 ここが決め所と踏んだのか、バジリスクが立ち尽くす俺に素早く巨体を巻き付けてきた。


「ぐ、ぐぁああ……!」


 万力のようなもの凄い力で、全身が締め上げられる。

 なんて力だ。

 全身の骨や筋肉が、ミシミシと悲鳴をあげた。

 苦しくて息が出来ない。


「くそぅ……っ、やられて、たまるか……!」


 なんとか脱出を試みるも、バジリスクの締め上げは強烈だ。

 微塵も揺らがない。


「シャアアアアアアアアアアア!」


 蛇の王が叫びながら、ますます締め付けを強くする。


「おの……、おの、れ……」


 意識が遠退き始めた。

 そのとき――


「グルゥオオオオオオ!(とりゃああああああ!)」


 咆哮が轟いた。

 夜空を突っ切って邪龍が現れたのだ。


 空から急降下してきたモツァレラが、いきおいそのまま、強靭な鉤爪をいかした蹴りをバジリスクに見舞う。


「フォル! いま戻ったぞ!」

「わたしも、ただいま戻りました!」


 従魔たちが戻ってきた。

 リコッタ、モツァレラ、オスト。

 全員集合だ。


「って、フォルさまがピンチなのです!」

「なにぃ!? 僕もすぐに加勢するぞ! 待っていろフォル!」


 麒麟の一本角が、電流を纏ってチリチリと輝く。

 極太の稲妻が、蛇の王の鶏冠を直撃した。


「フシャアアアアアアアアアア!」


 苦痛に喘ぐバジリスク。

 石化の魔眼をオルトに向けようとする。


「グラァアアアア!(おっと、妾を忘れてもらっては困るのじゃ!)」


 隙を見せたバジリスクに、モツァレラが鉤爪の一撃を叩きつける。


 さしものバジリスクも、邪龍と麒麟の激しい連続攻撃を受け、俺を縛り上げる拘束が僅かに緩んだ。

 そこにすかさず、山猫耳を立てたリコッタが走り込んで来る。


「フォルさま! いま助けるのです!」


 ぼろぼろになった俺は、駆け込んできたリコッタに救出された。




 邪龍姿のモツァレラが、バジリスクと激しい戦いを繰り広げている。


 そろを眺めながら、俺は体を横たえ、リコッタに膝枕をされていた。

 麒麟姿のオルトが駆けてくる。


「大丈夫か、フォル! 約束通りモツァレラを解放してきたぞ!」

「わたしも、労働契約書を見つけてきたのです!」


 どうやら2人は無事役目を果たしてきたようだ。

 さすがはこの俺の従魔である。


「それはそうとフォル。無理はするなと言っただろう?」

「そうなのですよ! こんな傷だらけになってしまって!」


 リコッタが心配そうに、俺の顔を覗き込んだ。


「……ふん! この程度、無理のうちに入らんわ!」


 反射的に虚勢を張る。

 自らの従魔相手に、情けない態度を見せる訳にはいかない。

 まぁ空元気も元気のうちってやつだ。


「契約書の入手とモツァレラの奪還。ともかくこれで、僕らの目的は達成されたのだが……」


 オストがバジリスクに視線を移した。


 彼女の言わんとすることはわかる。

 流石にあれを放置して立ち去る訳にもいくまい。


 膝枕から起き上がって、暴れ回るバジリスクを見据えた。


「……ん? そういえば……」


 先程まであんなにも俺を侵食し、苦しめていた破壊衝動が、鳴りを潜めている。

 しかし溢れ出す魔王の力はそのままだ。


 これは一体どうしたことだ?

 そういえば、リコッタに助け出されたときから、悪意の侵食が止まっている。

 こいつ、俺に何かしたのか?


「……はぇ? どうしたのですか、フォルさま?」


 気付けばリコッタを繁々と眺めていた。

 目に映るのはいつもの間抜け面だ。

 口を半開きにしてポカンとしている。

 どうやら、なにもされてはいないらしい。


「……ふん。なんでもない」


 ふいっと視線を逸らした。


 ともかくいまはバジリスクだ。

 この感じなら、全力で魔王の力を解放しても、1発2発くらいなら持ちそうである。


 まだふらつく足取りで、数歩前に歩みでた。

 モツァレラが苦戦する姿が目に映る。


「キシャアアアアアアアアアアアッ!」

「グリェエエエエエエ!?(ぬわぁあ! こやつ、強過ぎるのじゃああああああ!?)」


 どうやらモツァレラには、バジリスクの相手は荷が重いらしい。


 いかに相手がバジリスクといえど、本来なら邪龍とて引けを取るものではないのだが、モツァレラはまだ幼女。

 この劣勢もやむなしというところか。


「ふふん! 仕方あるまい!」


 俺はリコッタとオルトを背にしながら、モツァレラに呼びかける。


「退くのだモツァレラ! あとは俺に任せろ!」

「グルェ?(なんじゃ?)」


 力を解放する。

 途端に黒い瘴気が靄のごとく俺の身体を包み込んだ。


「キシャアア!?」


 戦闘中のバジリスクが、俺から放たれる異様な気配に気が付いた。

 同じくそれを察したモツァレラが、慌ててその場を離れていく。


「いくぞバジリスク! さぁ、覚悟を決めろ!」


 大地を蹴って飛び出した。

 足場がクレーター状に陥没する。


 矢のように疾走する俺は瞬きする暇に、もうバジリスクの眼前に迫っていた。


「うおおおおおおおおおおおおっ!」


 渾身の力を拳に込める。

 バジリスクの脳天を思い切り殴りつけた。


「ギジャアアアアアアアアアアッ!」


 しかし流石は蛇の王である。

 バジリスクはなんとか踏み止まって強靭な尾を振るってきた。

 いまの俺の一撃を受けても、反撃に転じようとしてくるとは!


「だが、これで終わりだ!」


 魔王の力を更に解放した。

 質量すら伴うような圧が放たれる。


 漆黒の闇と化した俺は、振りかぶった拳をもう一度バジリスクに叩きつけた。


「シュアアアアアアアァァ……ッ!」


 大蛇の頭が、地面にめり込む。

 地響きとともに、激しい土煙が舞った。


「わぁ! さすがフォルさまなのです!」

「ああ、それでこそ僕の主だ!」

「グルェ!(まぁまぁじゃな!)」


 従魔たちが騒いでいる。


 土煙が晴れる。

 無双の怪物バジリスクは、遂に大地に横たわり、力なくその首を垂れていた。

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