モノローグ
グリフォンが、雄大な翼を羽ばたかせた。
天高く大空を舞い上がっていく。
その魔獣の背中には、はしゃぎながら手を叩く幼い男の子と調教師。
地上には、真っ白なユニコーンと笑顔で戯れる少女の姿が見える。
ここは王都外れにある幻想動物園だ。
幻想動物園ってなにかって?
初めて聞いたのかな?
だったら教えてあげよう。
幻想動物園は、あらゆる動物を展示したテーマパーク。
そこに行けばたくさんの特別な動物たちに会える。
キマイラにオルトロス。
果ては恐ろしい邪龍から獣の長たる霊獣麒麟、蛇の王バジリスクまで。
山猫みたいに、どこにでもいるような動物から、魔獣、霊獣なんて幻想生物に至るまで、様々な展示動物に会えるテーマパーク――
それが幻想動物園なのさ。
八本脚の神馬スレイプニルが、雄々しくいななく。
それを見物していた来園客が歓声をあげた。
休日の幻想動物園は、大勢の家族連れ客で賑わっている。
でもそれはまだ少し先のお話……。
そのテーマパークは、いまは人気がなく経営不振の真っ只中だった。
でもそこにひとりの男が訪れる。
亡き父から園を引き継ぎ、新たな園長へと就任した元冒険者のその彼は、人っ子ひとりいない園内を見回してため息をついた。
……なんだこの寂れた幻想動物園は、と。
展示された動物たちはどことなく元気がない。
設備もくたびれている。
こんな幻想動物園、あとは潰れるのを待つだけだ、なんて思うだろう?
でも心配することはない。
経営のけの字も知らない新しい園長だけど、彼ならきっと、ちょっと強引な方法に訴えてでも、このテーマパークをたくさんの笑顔が咲く場所に変えてくれるから。
――slapstick fantasy.
これは王都の片隅にあるうらぶれた幻想動物園が、ひとりの園長の手によって、王都一と謳われるまでになる様子を描いた物語――