モヒカン登場
小説初挑戦です!数分私に預けてください。きっと十万石ワールドにのめり込んでいただけると思います。至らない点は多々あると思いますが、何卒よろしくお願いします!
「おい、聞いたかよ」
「何を」
俺は昨日までにこなさなくてはならなかった書類を一心不乱に処理していて、他所様の噂話などと付き合っている暇は無かった。
「お前なんで知らないんだよ、警視庁からど偉いのが来るって噂だよ」
「ふーん」
俺は手を引っ切り無しに動かしながら、返事をした。
この時は移動なんて珍しい事でもないし、ましてこの自分に影響が出るなんて思ってもみなかった。
俺は一通り目の前の紙山を成敗し終え、署の一階にある休憩所でコーヒーを楽しんでいた。
俺は煙草はからきし受け付けないたちで、楽しみといえば今飲んでいるコーヒーぐらいなものなのである。ほとんどの奴は肺に煙を入れたい奴ばかりなので、コーヒー仲間の谷口とはよく噂話や愚痴の言い合いで、ここに配属されてから同い年という事もあり、比較的仲良くやっている。
そしたら突然背後から息を切らした少し高めの声が聞こえた。
「すみません」
「ん、何かお困りです…か?」
目の前にはおよそ180cmの大柄な体型で顔は平たく丸い饅頭のようであった。だが何と言っても顔の上だ。
頭に太刀魚がぶっ刺さってるが如く頭の中心から20cmはあろう髪の毛が凛とそびえ立っていた。
俺はここに赴任してきてから様々な経験をしてきた。もっとも先輩方には及ばないが、変な奴なんてごろごろ見てきていたので、ちょっとやそっとの変質者ぐらい朝飯前だと自負していた自分を瞬く間に斬り捨てるような鋭さに、少し引いてしまい、反応に現れたことを隠そうと、俺はモヒカン野郎に用件を聞いた。すると
「いや、随分ここ田舎でしょう、駅からも遠いし外は大雪で少しくたびれたから休憩所でもなんでも良いから座れる所ない?」
俺は快く休憩所に促してやった。
心の中では「お前何なんだよそのモヒカン。しかもその饅頭顔で。羞恥心ってものがまるで無いのかよ、もうすごいよ、なんか尊敬するよ。」と呆れかえっていたが、見た目が見た目だけに、楯突こうなんて思いもしなかった。
唯一の憩いの場である休憩所は奴が占拠しているから、署から出てすぐにあるコンビニのイートインスペースで苛立ちを抑えようとコーヒーを2杯も飲んでやった。
やがて、俺の休憩時間は終わりを告げ、また事務処理をさせられるんだろうなと思いながら重い腰をあげた。
コンビニから署まで、道路を横切るのに少し離れた横断歩道があるが、どうも俺は素直になれず、車が来ないことを確認し、最短ルートを小走りに横切った。
署にもどり、階段を上がろうとした時、モヒカン野郎がいないのに気がついたが、関わりたくなかった為知らんぷりをして、そのまま上がっていった。
すると、署長がみんなの前で何やら機嫌が良さげに何か話ている。俺は慌てて自分の席につき、途中から話を聞き始めた。
「というわけで、今日から配属する事になった轟君だ。こっちに来てくれ」
棚の陰から太刀魚が覗いた。
「お前かい!」
「なんだね、高野知り合いか?」
つい心の中でつっこんだと思ったものが声に漏れてしまっていた。
ちらほらクスクスと笑い声が聞こえて、俺の耳に熱がこもっているのを感じた。
「いえ、違います。先程一階でお目にかかりまして」
なんでこんな恥をかかなくちゃならないんだい。
轟って言うのね、うん、その髪天まで轟きそうだよ。ってそんな事じゃなくて、こんな身なりの奴が刑事かよ日本も終わったな、まぁいいやと呑気に席に着いたら
「んじゃあ、後は高野よろしく頼むぞ」
「…は?」
「は?とはなんだね同じ班になろうってのにそんな態度はないだろう、ここの雪は足を取られるし迷子になりやすい、何から何まで手取り足取り教えてやるんだぞ」
待て待て話飛躍し過ぎてわけがわからん。
「おい谷口どうなってんだよ」
救いの手を求めて谷口に聞いてみたが、
「ご愁傷様でございます」
期待をしっかり裏切る返事がすっと帰ってきた。
俺はもう色々諦めた。
なんで轟がこんな田舎に来た理由は署長以外誰も知らないし、どうせ考えてもたかが知れてる。寧ろ、理由を知ったところで何も変わらないと思い、魂が抜けたように轟の研修が始まった。
もし「この後気になる」「応援してみようかな」と思ってくださった人がいれば、どんなコメントでも嬉しいので一言いただけたら幸いです。なにせモチベーションだけで生きてるような人間なんでwよろしくお願いします。