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第9話 ダンジョン

 朝自室で目が覚めるとまずは病院の見回りだ。

 入院の患者さんがいれば話を聞く。

 今日は特に入院患者はいないので、通院予定の人のカルテに目を通しておく。

 その後周辺国家の動きと、自分の国の明らかな異常がないかを確認する。


 その後は前日の診察で気になった人がいれば朝のうちに様子を見に行くこともあるが、今日は特にないからそのまま朝食の準備に取り掛かることにする。

 朝食を作って食べているとラッテが出勤する。

 いつの間にかラッテは正式な看護婦として勤務することになっている。

 社会体制が復活してきて、ゼニーによる経済活動が再開してきている現在、皆が手探りで通貨社会を作っている。

 一度存在していたシステムを復活させている性か、0からのスタートよりも驚くほどスムーズにうまく行っている。世界のシステムというやつなのかもしれないな……


「先生? どうしましたかぼーっとして?」


「ああ、ごめんごめん。今日は例のダンジョンに行く日だから緊張してるのかも」


「そうですね。でも先生は気をつけてくださいね。

 他に先生はいないんですから!」


「今じゃもう村のみんなはラッテを女医扱いしてるじゃないか」


「私じゃできないこともたくさんあります。

 先生がくれた本だってわからないことだらけだし……」


「いやいや、あの内容を理解できてるだけでも凄いよ! おれなんて6年かけて大学出ても病院では全然役に立てなかった。今でこそようやく半人前ってとこだよ」


「先生はもっと自信を持ったほうがいいと思いますよー、例の代表者の時だって、絶対にそういうものにはならないって固辞して」


「いやいや、俺は神様の使いであって、みんなは神様に感謝しなさい。

 そして、俺は神の力を持っている。そんな特殊な人間が代表じゃダメなんだよ。

 君たち自身で国を作れるようにならないと……」


「やっぱり、先生はいつかいなくなっちゃうんですか?」


「そりゃ、寿命が来たら死んじゃうかもしれないし、それに……一応故郷は、ある」


 最近ラッテはこの話をよくしてくる。

 確かに俺の最終目的は、この国を獣人たちに取り戻させることで、それが終われば約束通り元の世界に戻る事だ。

 ラッテはこの話をすると怒ったような寂しいような顔になる。

 なんとなくその表情を見ているのはつらいので、いつものようにポンポンと頭を撫でてあげる。


「なんにせよ、それを成し遂げるには何十年もかかるよ、その時に俺がどう考えているかなんて、今はわからないよ。なによりも、すぐに迫りくるだろう脅威に立ち向かえる力をみんなにつけてあげないと」


「……わかりました。今日はいつも通り私たちが中心で病院は頑張りますね!」


「よし!よろしく頼むよ。ラッテは笑顔のほうが俺もうれしいよ」


 にっこり笑うネズミさんとか貴重でかわいいんだよね。ほんとに。


「もう……先生は無自覚でそういうこと言うから……ゴニョゴニョ」


「ん? なんか言った?」


「なんでもありません!!」


 と、言いながらも尻尾はご機嫌だ。こういうところもこの世界の住人の可愛いところだ。



「よーし、みんな集まったな! 今日はお試し、どんな具合かを見るだけだ。

 絶対に無理はしない。いいね」


 目の前に並ぶ本日の探索隊のみんなは緊張した面持ちでうなづく。

 一度魔物との戦闘経験があるネズミの皆も緊張は隠せない。

 筋力や体格でまさる犬族の皆も入念に装備を確かめている。

 俺が与えた鉄の模造刀。刃は引いてあったけど研いだのでまぁまぁな切れ味だ。

 防具は子供用の剣道の防具を与えた。軽いしまぁまぁ固いしお試しにはいいだろう。

 使う人には鉄の鍋を盾代わりに与えてある。ゲームではよくあるが、結構つかえるのねあれ。

 訓練でもみんな器用に利用していた。


「それじゃぁ行こうか」


 俺も剣道着に身を包んでいる。

 中学まではびっちりやっていたんだけど今でも体が動いてくれるといいけど。


 石の扉を開けると、少し湿って冷たい空気が外に流れ出す。

 石畳に石壁の綺麗なダンジョンが見事に出来上がっていた。


「これはすごいな……」


 ご丁寧に天井部分に光る苔のようなものが生えているようで、薄暗くはあるが奥まで見通すことができる。


「敵から発見されるから必要になるまでは照明はつけないで行こう」


 一応全員に首掛けのLEDランプは支給してある。

 いざとなったら両手がフリーで前方を明るく照らしてくれる。

 一歩ダンジョンへと踏み込むと、そこが外とは異質だとなんとなく肌が感じる。

 通路は3・4人が並べばいっぱいになる。天井の高さは3メートルといったところか。

 剣をもって立ち回るのに気をつければ問題はない。

 混戦状態を作らないように注意したい。


 しばらく代わり映えのしない通路を歩いているとべちょべちょという音が聞こえる。


「お約束キター」


 思わず笑みがこぼれる。

 ぶよぶよとしたゼリー状の体。スライムのお出ましだ。


「ちょっと俺にやらせてくれ」


 どんなもんか確かめるために俺一人で対応してみる。

 ジュルジュルと動くスライムの動きは遅い。

 特に積極的に襲ってくるそぶりもないのでこちらから仕掛けてみる。


「セイッ!」


 上段から振り下ろし。手に伝わるのはわずかな弾力のあとにじゅるんと柔らかいものを斬る感覚。

 スライムは見事真っ二つに斬れて灰になっていく。

 あっさりと倒してしまった。

 5ゼニーを手に入れた。チャララララッチャッチャー♪


「弱っ……」


 想像よりはるかに弱い。その後何戦かスライムと戦ったが、全員問題なく一発で倒すことができた。


「よし、戦えることがわかったのはうれしい。油断はするなよ。

 もし寝てるとこ襲われたら窒息とかさせられる可能性もある」


 たぶん手で払うだけでやっつけられそうだけど、油断は何より怖い。

 パソコンにマッピングしながら行動範囲を広げていく。

 小部屋のいくつかには宝箱があった。

 数十ゼニーだったりナイフだったり薬草だったり、RPGしている。

 敵も一階はスライム、蝙蝠、そして、ネズミが出てきた。


「これ、同士討ち?」


「いえ先生見てください。額に魔石が埋まっています。あれは魔物です」


「なんとなく君たちにやらせたくないから俺がやる」


「気にしませんよ?」


「そういう物なんだ、あっさりしてるね」


「あれは魔物ですから」


 なんか独自の考え方があるみたい。

 そして、同じ姿をしている魔物には魔石が埋まっていて、倒すと体は灰になるのは同じだけどその魔石も手に入る。


「久々に鑑定してみるか」


 魔石:一定数集めると種族の進化を行える。


「おおおお! これは夢が広がる!」


 出ました。進化!

 ますますダンジョンは俺の世界征服に欠かせない存在になりそうだ!





明日も18時に投稿いたします。

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