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第59話 祝賀ムード

 自分の意志とは異なって巨大なイベントとなってしまったが、ラッテにとっては一生に一度の大切な初めての結婚式、もちろん俺にとってもだが、盛大にやるのなら受け入れてラッテに思い出になってもらえるように頑張った。

 そのおかげで俺の想いをしっかりと込めた結婚指輪が完成した。


 ここのところラッテとは仕事の時しか一緒にいられない。

 お互いに結婚式に向けての準備に追われている。

 国全体としても祭典に向けての機運が高まっており、住民たちも盛り上がっている。


 そして、そんな国内の機運など、他国にとっては全く関係ない。


「……先生。命知らずの馬鹿トカゲ共が再び攻めて来そうです」


 はっきりと不機嫌とわかる声でラッテが情報を持ってきた。

 結婚式まで一週間という、最高に魔が悪い時だった。


「ほう、どうやら死にたいらしいですね」


「流石に今回は相手に同情するぜ、俺たちの怒りを思いっきりぶつけられるんだからなぁ!」


 最高に楽しみにしていた連休の前日に泊り仕事が入った様なテンションの皆。

 リザードマンたちもまさかこちらがそんなイベントの寸前だとは知らずにちょっかいを出してきたのだろう。


「奴らに二度とこの地を襲う気も無くなるほどに、撃てーーーーー!!」


 パーシェットの号令と共に大量の矢と砲撃が敵軍に叩き込まれる。

 遠距離ユニットは進化して弓部隊と砲部隊に分かれている。

 この世界は、銃が必ずしも弓の上位ではない、結局使い手次第だ。

 それぞれメリットデメリットが存在しており、上位職になれば弓でも銃を上回るなんて当たり前のことだ。

 今回は特に敵軍の行軍を防ぐ罠もない、しかし敵にはそんなことはわからないためにどうしても行軍速度は遅い、そこに容赦のない弓矢銃弾が降り注ぐ。

 こちらは自陣の防壁の上から一方的な攻撃を仕掛けられる。

 以前よりも苛烈な攻撃にリザードマンたちの行軍も停止する。

 このまま攻撃の手を休めないという選択肢もあるが、俺たちはその選択肢は取らなかった。


「おら、突っ込め――――!!」


 ラージン部隊の騎乗部隊、ガイア部隊騎乗部隊が足の止まった敵軍を引きちぎっていく。

 挟撃の形で食い破られ、敵の陣形の維持が不可能になる。そこに再びパーシェット部隊の攻撃が降り注ぐ、さらに間髪を開けずにベイオ、ラージン、ガイア、ラッテ部隊が包囲するような形で攻撃を加えていく……


「……圧倒的だな……けが人も送られて来やしない……」


 戦闘における士気を強く意識する戦闘となった。

 リザードマン軍は壊滅。組織的抵抗も行えなくなり、そのまま落城。

 物のついでのように母魔石を手に入れた。


「先生、この国は防壁作らなくていいですよ。まだ国土の発展が終わっていません。

 魔石がない状態で敵に与えて、開発などの時間稼ぎに使いましょう」


 戦闘が終わり、ラッテからそう提案される。

 まだ、国土を拡張する段階にない。無防備地帯として放置して、適当に他国が攻め込めばいい。

 国のコアが無ければ発展は非常に緩やかになり、足かせになることを見越しての空城の計。


 結局この戦いのおかげで祝勝会兼結婚式が、より盛り上がりを見せたことは怪我の功名だった。


 ずっと秘密にされてきたラッテの花嫁姿、その姿は目を疑ってしまうほどに美しく、俺なんかがこんな素敵な女性を妻にしていいのか不安になるほどだった。

 しかし、ラッテの俺を見る目は温かく、優しく、すべての信頼を寄せてくれていることは疑いようもなく、その視線を受けるに値するような男になろうと強く心に誓った。


「健やかなるときも病める時も、私、羽計設楽は羽計ラッテを愛し抜くことを誓います」


「健やかなるときも病める時も、私、羽計ラッテは羽計設楽を愛し抜くことを誓います」


 ラッテの指にお手製の指輪をつける。ラッテも自らの手で手に入れた鉱石を使った落ち着いた指輪を俺の指にはめてくれた。


「ラッテ……これからもよろしくね、愛してるよ」


「私も、死ぬまで先生と一緒にいますからね」


 大勢の人に祝福されながらキスをすると、空に大きな花火が打ち上げられ、祭りの始まりを告げる。


「設楽先生おめでとーーー!!!」「ラッテ様おめでとうございます!!」


 俺たちの幸せを願ってくれるたくさんの人々の声が国中に木霊した。

 この日から一週間、わが国は大賑わいを見せた。

 空前の結婚ブーム、そして、しばらくすると出産ブームが訪れて俺の睡眠時間が消失するのはまた別の話だった。


 俺とラッテは、病院以外のマイホームを用意してもらって、そこで暮らすことになった。

 首都を見渡せる素晴らしい景観、二人では少し広い家だったが、嬉しい知らせが届くと未来の間取りを考えるのが楽しい広さと変わっていく。

 

 こうして、俺は、この国に、この大地に足をつけて生きていく。

 今だ先の見えない戦いの中に身を置いてはいるが、本当の変える場所と、真に守るべき存在が出来たことによって、明確な勝利への渇望と責任を背負ったような気持ちになる。

 新しい世代の幸せな生活のためにも、俺らがこの国を勝利へと導いていかねばならない。


 そう、決意を固めるのであった。

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