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第40話 増える獣人種と勉強量

「えーっと、キツネの飼育、動物園診療裏話、あとは海外の文献、鳥類の基礎医学、コンパニオンバード疾患ガイド、あとはっと……」


 獣人が増えた後のいつもの光景だ。

 今度はキツネ、ヒツジ、ニワトリ系獣人が復活した。

 動物種が増えれば、学ぶことが増えるのも道理である。


「初めての鳥類か、インコとか文鳥なら診てたけどニワトリは久しぶりだなぁ……それに、ヒツジも大学以来だぞ……」


「動物型ではなく獣人型ならば構造が似通っているんですよね? 

 そちらで診療なされば……?」


「じょ、女性を診るのがこっぱずかしいんだよ……」


「皆、先生にそのようなことを思ったりはしませんしさせませんよ……」


 近くをたまたま通りがかった看護師さんがひぃって言いながら出て行った。

 室温が5度くらいは低下したね、今。


「それに、俺は動物が好きなんだよ。狼達だってみんないい子になって手伝ってくれるし、動物と人、この場合は獣人が共に楽しく過ごせる社会を作る手伝いをしたいんだ」


 なんか、それっぽいことを言ってごまかしておく。

 

 オーガの国との戦争も終わり落ち着きを取り戻し内政にいそしんでいる。

 コボルト国に送った斥候からは新しい報告はない、パソコン上でもあちらの国も穏やかな時間が過ぎているようだ。


「よし、午後は頼んだよー仕事してくる」


「行ってらっしゃしませ先生!」


 俺は、オーガの国を手に入れたことで増えた国境整備に日々忙しく走り回っている。

 午前は戦争後の怪我の再診や日常診療、午後はこうして穴掘りと山づくりにいそしむ毎日。

 以前も話した通り、この時間は結構好き勝手出来るのでリフレッシュタイムになっている。

 バギーで風を感じながら音楽を聴いたり、ゲームをしたり、幌を出して本を読んだり。

 この堀と防壁づくりによって曲芸に近い、なぞの職人芸の収納技術と取り出す技術を手に入れていた。 


「この間みたいに壁の合間から出たり入ったりするのは有効だったなぁ……

 少しでも速度上げるために出入り口は巨大な塊にして、それをちゃんと維持できるようにブロックで防壁を作ってみるかぁ……まてよ、弓矢だって銃眼みたいなのあればより安全に戦えるよな、たまたま敵が遠距離は石を投げてくるくらいだったけど同じように弓矢使うやつだっているだろうしな……」


 いつもの独り言を交えながらなんだかんだ楽しみながら毎日を過ごしていく。

 しばらくはぬくぬくと内政を行って国家の繁栄を願いたい。

 すでに国土としては人数に対して過剰な大きさになっている。

 それを補うのが住人たちの繁殖能力だ。

 なぜか皆多産で早熟で安産だ。

 出産にかかわるトラブルはすぐに生命の危機につながる非常に難しい分野だが、この世界では……


「先生、生まれました6つ子でした~」


「先生うちのが先日4人産んだよ~」


 こんな感じで自宅でいともたやすく出産をして報告してきてくれている。

 うれしいことだが、大変なのは事務方の人々だ。毎日毎日戸籍が増えていくためにその管理は多忙を極めているそうで、軍の方からも応援をよこしている。


 ぬくぬく内政状態になると、様々な国としての問題が浮かび上がってくる。

 滅びかけていた獣人たちの生活が急速に発展したことにより、衣食住の充実から、教育、勤労、金融など様々な問題が発生することが予測された。

 しかし、獣人たちは俺が通販で買った様々な書籍を置かれた図書館で自ら学び、それを広げ、あっという間に国家運営を学び取っていってしまった。

 すでに国の自治に関してはお互いがきちんと律して行っていけるほどまで成熟している。

 あと、これは神の恩恵なのだとおもうが、現状悪人? 犯罪など行うものがいない。

 もちろん軽いいざこざは起こるが、凶悪な犯罪を起こそうと思う獣人が存在しない。

 

「動物も人間でいう犯罪行為を行うのは少数だもんなぁ……」


 弱肉強食な社会だが、そこに意志と言葉とお互いを思いやることが出来れば、動物の社会というものはこんなにも素敵な世界になるのかと、自分が人間であることが少し恥ずかしくなってしまう。


「軍隊が警察も兼ねていても暴走を心配したりしないでいいのはありがたい……そろそろ国の代表は獣人達に立ててもらう時期かもな……」


「駄目ですよ」


「ひぃ!!」


 突然一人のはずのバギーで話しかけられて心臓が止まるかと思った。

 急ブレーキをかけるといつの間にかバギーの後ろにラッテが立っていた。

 急ブレーキしたんだけど、微動だにしていない。どうやった、そもそもどうやって現れた……?


「影飛びしただけです。設楽先生の元へはどんな時でもすぐに駆け付けますから」


「……はぁ、びっくりした……な、なにかあったの?」


「その前に、この国は設楽先生が上に立っているからこそまとまるんです。諦めて王として采配を振るい続けてください」


「えー……そろそろ色々任せてのんびり病院とゲームとダンジョンで暮らしたいんだけど……」


「それ、今とあんまり変わってないですよね?」


 ……そういえばそうだ。


「そ、それに……奥さんとかー子供とかー、もっとあるんじゃないんですかー?」チラッチラッ


「……なあラッテ……その……俺は、前から言っているけどいずれ元の世界に帰るか、死ぬかって男だよ? 今のラッテは美人だし、可愛いから同じ獣人からもモテるだろ? 俺なんかじゃなく……」


「先生のばかーーーーーーーーーーー!!」


「ふべらっ!!」


 ラッテの平手が下あごを正確に打ち抜き、俺は宙を舞った。

 生まれて初めてトリプルアクセルを飛んだ日になった。


 

 




 


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