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第39話 侵攻と親衛隊

 オーガの国は起伏の多い山岳地帯が存在する。

 草原、森林、山岳と地形のバリエーションが多い。

 現在我々は首都と思われる場所まで、油断せずに行軍を続けている。

 すでにラッテ部隊の斥候は首都までの道すがらに伏兵などの存在がないことを報告してきている。

 パソコン上でもまとまった抵抗の存在は見当たらない。


「この感じだと、首都の近くで夜を越すことになりそうだね」


「このまま攻め込まないんですか?」


「さすがに夜間の都市戦は危険が多いよ」


「報告によればもうまとまった戦力は存在していないはずです」


「ん? 都市の前にオーガが陣を敷いている? いや、陣とも言えないか……」


 パソコンの画面上に、都市入り口前にオーガが出てきていた。

 巨大種ほどではないが、通常のオーガよりも巨大なオーガが一体。

 そのオーガを守るように十数体のオーガが立ちはだかっている。


「俺たちを待っていそうだね。少し進行速度を上げよう」


 その行動にオーガたちの覚悟を感じた俺は全軍に全身速度を上げるように指示を出す。

 半獣タイプに変身すればバギーと並走だって可能なほどの速度が出せる。

 途中の奇襲の可能性は考慮に入れなくてよいと判断して、全速力で都市へと侵攻した。


【……わが軍は敗れたか、ゴブリンの国が滅んだと聞いて覚悟はしていた】


 巨大なオーガが口を開いた。


「貴方がこの国の王か?」


【そうだな、そう言っていいだろう。ゴブリンの言う『人間』なのだな貴様が……

 とても強大な力を持つようには見えんが、周りには強き者もいるようだ。

 伝説の人間は、一人の力よりも集団が恐ろしいと伝えられている。

 獣人の集団を力として、ふたたび魔族に牙をむくか……

 我らオーガの民は負けた。

 しかし、他の魔族の元で戦士としてこれからも勇敢に戦う!

 安寧な時間が我らを弱くした!

 これから始まる戦争の日々が、再び我らに力を与えるであろう!


 さぁ、我が自慢の戦士たちよ、死出の旅路に人間に一泡吹かせようぞ!】


 王の檄に周囲の臣下たちが奮い立つ。

 命をとした突撃を、一団となって行ってくる。


「その心意気やよし。皆、武人として思うところはあると思うけど、戦争として我が国の軍の力を見せるのも礼儀に反さない。パーシェット、ラッテ、放て!!」


 俺の号令で大量の弓矢、特殊弾が空に放たれる。

 敵の突撃の正面にはベイオ部隊が頑強な盾と槍を構える。

 突撃を止めれば両側からラージン、ガイア部隊がその咢を閉じるだろう。


 実際にはベイオ隊が戦うことは無かった。放たれたパーシェット、ラッテ隊の攻撃は彼らの集団の命をも撃ちぬいた。


「全軍、敵軍へ黙祷。しかるのち都市に侵入、母魔石を回収する」


 灰となり風に舞っていくオーガの王たちに追悼の意を表す。

 自己満足かもしれないが、彼らの決死の突撃に対して敬意を払った。


 都市内では抵抗は受けない、すでに民間人的位置づけのオーガたちは国外へ逃げ出した模様だった。

 王座にたどり着くとなぜかガウスが待っていた。


「ガウス?」


「設楽様、私はガウスであってガウスでありません。NPCですから」


「そうか、母魔石は?」


「この下になります。マスター登録をどうぞ」


 以前と同じように登録を行い、パソコンとの統合処置を行う。

 こうして我らの国は二つの国土を手に入れた。

 相変わらず既存の建物は消え去ってしまった。


「こんなに広大な土地を手に入れても、管理する人的要因が足りなすぎる……」


 母魔石を手に入れて国が大きくなり、ポイントも大量に手に入った。

 今は一刻も早くマンパワーを伸ばさないといけない。

 マンパワーを伸ばすためにはきちんとした福祉、食糧を確保しなければいけない。


「資源、食糧を得られるダンジョンがあることはうちの国の最大の強みだ」


「お疲れさまでした先生。明日から大変ですね」


 ラッテの言う通り。また防壁なんかを作ったり、俺の日常は忙しくなる。

 以前に比べれば優秀な文官も多く存在して随分と楽になった、それでも堀を掘って壁を作ることは俺以外にはできない。正確には、チートな速度ではできない。


「とりあえず、今日は帰ろう。この勝利を待っている人々に伝えないとな」


「設楽様、この地の跡地にはモニュメントが残ります。ご安心ください」


「おお、それは助かる! なるほどね、文明は滅んでも首都にはモニュメントが残されるんだね」


「都市を作られるなら、その国で最も適しているのが首都があった場所ですから」


 確かに、建物や装飾はなくなったが、水路などはそのまま残されている。

 それをたたき台に町を作り始めれば、かなり楽に町は発展することが出来るだろう。


 コボルト国の動向も気になるが、こうしてオーガ国は俺たちの国土になった。

 

「先生、今回も仲間は増えるのですか?」


「えーっと、あ、増えるね。二個目の母魔石も特典があるみたい」


「いいですね、また国がにぎやかになります」


「しばらくは内政にいそしんで人口を増やしてもらわないと、みんな頑張って!」


「……先生も頑張ってくださいね~~」


 氷のような表情で笑うラッテさん。心の底から怖かった。


 

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