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第38話 交戦

「突っ込めぇ!!」


 ラージン隊がオーガの列に突撃していく。

 横に広く布陣した真ん中を食い破るようにラージンが突撃を決める。

 オーガ一人に対して複数名で当たり、確実にオーガを仕留めていく、左右に展開するオーガが集まる時をかけずに方向転換して別の場所に食いついていく。

 そうして防壁方向にオーガの列を食い破ったラージン隊は壁にそのまま進み続ける。


「ここだラージン!」


「先生! お願いします!」


 俺は壁の一部を収納する。即座に壁に通路が出来上がり、ラージン隊はあっという間に壁の内側になだれ込む、あとは俺が元通りに壁を作り上げる。

 そしてすぐにラージン隊の被害を手分けして確認する。


「なあに、完全な不意を突いてやりました。こちらの被害は皆無ですぜ」


「どうやらそうみたいだな、3名ほどちゃんと治療する。

 しばらく忙しいけど対応される前に被害を与えておこう頼んだよ」


「ええ、久しぶりに狩りがいのある獲物ですから!」


 ラージンは興奮気味に答える。


「お前ら! 好きな女がいたら武勇伝稼いで来い! カッコいいとこ見せてやれ!」


 再び突撃を行う。オーガの陣形は多少の集まりを形成しようとしているが弓隊がそれを阻む。


「ラージン隊に楽をさせてやって後で酒でもおごってもらえ!」


 塊同士を合流させないように火計によって分断してラージン隊の数的有利を守る。

 壁に取りつくオーガも現れるが、自らの持つ力と武器でも微動だにしない壁の前に孤立し、上から弓兵の集中攻撃を浴びて後退を余儀なくされる。

 壁の切れ目である入り口部分はベイオを中心とした部隊が強固に防いでくれている。

 少しづつだが確実にオーガの数を削っていく、しかし、敵だってただやられるだけではない。

 何度目かのアタックでラージン隊が突破したときにオーガ部隊が新しい動きを見せる。


「先生、オーガ隊が突破と同時に包囲するような動きを見せています」


「了解、この方法はここまでだな、ガイア! 行ってくれ!」


「待ってました!!」


 壁を取り除き相手の想定していない場所からラージンを半包囲しようと動いていたオーガの背後からガイア隊をぶつける。

 同時に全軍撤退の狼煙と合図を送る。

 ガイア隊は包囲の網の一部をかみ砕きラージン隊と共に帰還する。


「助かったぜガイア!」


「なんのなんの! すべてラージン殿に決められては我らもつまらんですから!」


「早いとこ診察を受けろ二人とも、またすぐ働いてもらうぞ!」


「そろそろ、来ますかね」


「そうだな、ベイオ隊は問題ないか?」


「大丈夫です、彼らの槍衾は並大抵な攻撃では突破できません」


「良かった。しかし、次はその並大抵じゃない攻撃が来るはずだ……」


 突破できない防壁、自由自在に出入りする遊軍。

 リスク覚悟で入口を一点突破するしかないと考えるはずだ。


「先生!! でかいやつが出てきました!!」


「とうとう来たか、わかっていたけど、でかいな!」


 巨躯をもつオーガの中に巨大種がいるのはわかっていた。

 動きが遅く遠くから岩などを投げて援護をしていたが、とうとう前線に投入してきた。

 普通に戦えば鈍重な敵は怖くないが、それを盾に使ってくると厄介極まりない。


「まきびしとかもあいつを踏みつけて進んでくるんだろうな……」


「魔物の思考は恐ろしいですね」


「ああ、ベイオ隊に伝令、フェーズⅢに移行させる。決めるぞ」


「はい」


 必死になって入口を守っているように見せながら、少しづつベイオ隊を後退させていく、巨大種が防壁に迫った段階でベイオ隊に慌てたふりをして撤退させる。

 巨大種はその力で防壁を破壊しようともするが、そう簡単には壊れない、それを見たオーガ部隊が防壁の切れ目に殺到する。敵からすればとうとう防壁を突破したと考えただろう。


「敵陣に入り込んだと思ったら、がらんどうとしていれば、罠だって気が付くよね。

 でももう止められないぜ」


 再び壁の外の火計を発動する。

 火に巻かれてオーガたちは壁の内部に殺到する。

 壁の切れ目はわざと塞がない……

 壁の中へと逃げ込みたいオーガたち、壁の外に逃れようとするオーガ、それらが狭い入り口付近でごちゃごちゃになる。


「今だ!」


 混乱した場にラージン、ベイオ、ガイア、パーシェット、それにラッテの部隊が一気に攻勢をかける。

 壁に阻まれ、背後からの味方の混乱に押され、全方位からの攻撃に晒される。

 屈強なオーガたちも、この状況ではその実力を少しも発揮することはできない。


 なんとか火計の囲みを身を焼きながら突破しようとする者もいたが、弓隊の一斉攻撃を受けて一人また一人と灰となって消えていく。

 一度起きた大混乱は結局最後まで彼らを縛り付け、滅ぼしていった。


「みんな、よくやった。俺たちの大勝利だ!」


 おおおおおおおおおお!!


 歓声が大地を揺らす。


「けがをしたものは治療を受けるんだ、動けるものは、オーガの国を獲りに行く!」


 オーガ軍総数推定1500体(うちゴブリン200)、自軍489名。

 自軍死者0名。重傷者2名(手根骨骨折、鎖骨骨折)、軽症者37名。

 オーガ軍、灰となって消滅1400以上、逃走20以下、他不明。


 完璧な勝利だった。



一か月連日投稿してみました。

ここからは週一ぐらいを目標に頑張ります!

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