第26話 まったり内政?
今日は土曜日なので10時と18時に投稿します。
平穏な日常。
穏やかな診療。
そんな日々が戻ってきた。
「設楽先生うちの子が急に吐き出して……」
連れてこられたのはミニチュアダックスフントに似ている男の子。
人間換算で5歳くらいと言ったところ、確かに顔色が悪く辛そうだ。
「最近何か変なもの食べたりとかしなかった?」
男の子はびくっと体を震わせて恐る恐る答えてくれた。
「……ないです……」
微妙な間、飼い主さんに質問した時に何か隠しているときと似たような感じがする。
「先生はね、君を怒るために聞いてるんじゃないよ。原因が違うなら治療方法が変わってしまう。
怒らないから言ってほしい」
「ほら! テリー! ちゃんと答えなさい!」
「いや、いいんですよお母さん。そう怒ってしまうといいにくくなっちゃいますから」
「あっ、すみません」
「いいえいいえ、ね? 先生怒ってないから正直に言ってごらん」
じつはちょっともうあてはついている。さっきテリー君の答えた時にほのかに香ってきた。
「……昨日、……パパのお酒を……ちょっとだけ……」
やっぱり。反射的に怒ろうとするお母さんをラッテがナイスタイミングに抑えてくれる。
「今は吐き気する? めまいとか手足のしびれはないかな? あとはふらついたり」
「大丈夫……でも頭が痛い……」
「目の揺れとか神経症状もないね、水飲むと気持ち悪いかな?」
「うん、少し……」
「簡単に説明すると、君はアルコールを飲んだことで体がびっくりしちゃっているんだ。
アルコールは大人になってからじゃないとうまく体の外に出せないから、そのせいで気持ち悪くなったり頭が痛いんだ。でも、もっとたくさんとっていたらもっと怖いことも起きる。
だから、これからは気をつけてね」
「はい……」
「それで、治療なんだけど、基本的には吐き気を抑えて脱水を改善させるんだけど……
口から飲むとはいちゃうと思うから、夕方まで病院で休みながら点滴をするよ。
ちょっとちくっとするけど、我慢できるよな? 男の子だもんね!」
「……ちょっとだけ?」
「ああ、先生がささっとするからほんの少しだけ我慢できる?」
「うん、頑張る」
かわいい。こんな風に話せたら楽しいんだろうなぁ、大変なことも多いだろうけど。
ラッテが話を聞きながら留置針を用意してくれている。
テリー君の腕の血管を確かめて消毒しながら気を紛らわせる。
「そういえばラッテおねーさんはこの間ダンジョンの20階のボスを一人で倒したんだよー」
「えっすごい!!」
やっぱり男の子だ、この手の話にぐいぐい食いついている。
ラッテはその時の戦いを身振り手振りを合わせて活劇のように話してくれる。
「はい、じゃぁベットに行こうか」
「え? あれ!? いつの間に?」
「痛くなかったろ? 時間があればラッテおねーさんがまた話してくれるから、今日はゆっくり休んでね、お母さんは夕方またいらしてください」
「本当にすみません」
「まぁ、あの子も懲りたでしょうから。怒るのはお父さんを怒ってください。
子供の手の届くところにお酒を置かないように!」
「全くです! 帰ったら絞ってやります!」
お父さん、自業自得だよ。
「お見事でした先生」
「いや、ラッテの協力あってのことです。いつもありがとね。これで午前の外来はおしまいかな?」
「そうですね。お疲れさまでした」
「今日は検査も手術もないし、村のほうの仕事が出来そうだね」
「そうですね……すみませんゆっくり休めなくて」
「ラッテが謝ることじゃないよ、それに夜のダンジョンでリフレッシュしてるから俺の調子はいっつも最高だよ!」
この言葉は嘘じゃない。自分の体を使ってRPG体験は俺にとって最高のリフレッシュになっている。
まぁ、たまにはPCでゲームをやるのも楽しいけどね。
「今日は南東区画を仕上げていこうか!」
相棒のバギーさんに火を入れる。
町の構造は堀、城壁によっていくつかのエリアに区分けして、それを組み合わせて中枢施設は強固な防御を敷いている。
日本の城郭の二の丸、三の丸とかの考え方に近い。
タイマーをセットしてお気に入りのBGMを爆音でかけながら穴掘りと壁づくり。
俺のもう一つのリフレッシュタイムとなっている。
収納できるぎりぎりの範囲を見極めてコーナーを攻める!!
なーんて一人遊びをしている。
まったりゲームしながらドライブしているときもあるけどね。
「今日は~~真面目に~~お仕事しながらなんだよ~~……」
誰に聞かれるわけじゃないけど、独り言を変な曲みたいなのに乗せてつぶやきながら各部署の計画をまとめたものに目を通している。
技術発展はいろいろとチートを使っている。
皆に現代の製品を提供して分析分解して使えそうな方法で再現してもらっている。
識字率もどんどん上がってくれているから、日本の書籍を読める人も増えているから図書館のラインナップもどんどん充実させている。
人数が増えて使えるお金も増えてるからね、知識を金で買えると思えば惜しくない。
「そういや、神の奇跡どうしようかな……やっぱり人を増やすのが大事だよなー」
神の奇跡を行使するには信仰心的なポイントをためる必要がある。
まだまだ日産は少ないけど、ダンジョンで魔石を安定して手に入る用意なって以前よりははるかに向上している。
ストックの初級ダンジョンもまだ使っていないし、中級ダンジョンを作るって手もあるけど、まずは今のダンジョンをクリアしてからだな。
神の奇跡は、さすがは神の奇跡というものが多い。
転移のモニュメントを増やすとか、将来的に絶対に必要になるものもあるから無駄遣いするわけにいかない。
神獣召喚とかやってみたいけどね。あと、魔法復活。
魔法は魔物が魔法を使ってきたら考えよう、こっちは現代科学という魔法的なことを使っているし。
「でも、魔法はあこがれだよねぇ……回復魔法とかあれば、もっと犠牲を減らせるしなぁ……」
治療の補助としてもあったらうれしい。どんな仕組みなんだろう……
そんなことを考えながら、俺の昼休みは過ぎていく。
穏やかな日々です。
明日は日曜なので10時と18時に投稿します。