第23話 戦後処置
周囲では泣き出しながら俺の王就任を祝ってくれているが、当の本人である俺が自覚がない。
「設楽様、母魔石をそちらのパソコンに統合なさいますか?」
「え? そんなことできるの? てか、パソコンのこと知ってるの?」
「それは当然神が作った世界の端末のようなものですからわたくしは」
「そうかぁ、とりあえず統合しようか。そのほうがいろいろと便利だろうし」
「それではパソコンを開いて魔石に向けてください」
言われたとおりにするとにゅるんと巨大な魔石がパソコンに飲み込まれていく。
「ご確認ください」
神の手、神の目における自分の国、が広がっている。
さらに国を手に入れたことで大量のポイントも手に入れていた。
さらにはたくさんのボーナスも手に入っている。
「これはすごい!」
※初回母魔石ボーナス
ランダム3種族復活
『初級』ダンジョン作成権利
開放:モニュメント建築
神の像(水源)
ボーナスを受け取ったのち、既存の文明、設備は消滅します。
「ん? 消滅? ガウス、この消滅って言うのは?」
不吉なことが書いてあるのでガウスに聞こうとパソコンから視線を上げると、城が消えていた。
城だけでなく、町が消滅していた。
「この通り、ゴブリンの国の文化は消滅します。ゴブリンもこれからは一般モンスターとして変化して、築いた文明も消滅します」
「おお、結構シビアなゲームの作りになってるんだね……」
「設楽先生これは……」
「とりあえず。この国は手に入れた。いったん戻ろう」
「設楽様、とりあえずこの地にモニュメントを作成してください。
モニュメント間は設楽様が守護する神の加護のある者ならば瞬時に移動が可能になります」
「なんと! それはすぐ作ろう!」
モニュメントを選ぶとデザインを求められる。
いくつかの候補の中から俺は神の姿に一番近い像を選ぶ。
真っ白い大理石のよな神の像が指定した場所に現れる。
「みんな、これが君たちの世界を作った神様だ。大切に敬うようにね」
「私にとっては設楽先生が神なんですけど」
「いやいや、俺はただの獣医師、神様に頼まれてる使いっ走りみたいなものだよ」
「ううむ……納得いきません」
「ま、まあとにかく一回帰ろう!
重傷者も早く手を付けてあげないといけないから」
「そ、そうでした。総員すぐに移動します!」
「いや、ここでみんな待機してくれないか?
俺が先行する。モニュメントの効果があればけが人をいち早く輸送できるはずだから、みんなもここにいてくれれば一気に移動できるはずだ」
元ゴブリン国、ファステス国との国境付近、戦闘した場所だね、そこに一つ、そして最初の村に一つ、モニュメントを建てるつもりだ。
バギーをぶっ飛ばして戦場へと戻る。
残していた兵士たちが周囲でゼニーとかアイテムを拾ってくれていた。
ありがたや、ありがたや!
「獲ったぞ――!!」
叫びながら通過すると、みんな大喜びで抱き合ったりしている。
よかったよかった。
「もう少しだけ我慢してくれ!!」
臨時の診療所にも顔を出して無事にゴブリンの国を落としたことを報告する。
モニュメントを建ててすぐに出発する。
「先生これは!?」
「ごめん、あとで説明する!!」
驚く看護師さんたちに詳しく説明するよりも早く病院へと向かう。
病院を収納してくればよかったんだが、今入院している患者さんがいたんだ……仕方ないよね。
それからバギーのアクセル全開で村へとたどり着く。
「勝ったぞー!!」
と叫びながら村へと突入する。
村に残ってくれた人々に歓喜が広がる。
すぐに病院と神社の前にモニュメントをドーンと設置する。
「そういえば使い方……」
手に触れるとなんとなく使い方が頭に流れ込んでくる。
心の中で戦場のモニュメントを思い浮かべると、ふわっとした浮遊感を感じる。
目を開くとすでに移動していた。
「こ、これはすごい……」
後でわかるのだが、なんとパソコンで使用範囲設定とかも細かく設定できた。
「よし、重病人をここに運んでくれ。説明は後だ」
「は、はい!」
「すぐ戻る!」
俺は再びモニュメントに触れて旧ゴブリン城跡のモニュメントへと移動する。
俺が突然現れたことで周囲にいたみんなを驚かしてしまったが、すぐに状況を説明してどんどんモニュメントを利用してけが人の運搬を手伝ってもらう。
「よし! 優先順位順に処置を行っていくぞ」
病院に戻り、すぐに俺は本来の仕事に取り掛かる。
俺の仕事は戦争じゃない。獣医師だ。
止血処置だけ行っていた傷口は丁寧に消毒、必要ならば壊死した組織を取り除き再度止血し縫合処置を行う。感染創の可能性が高いために傷口にはドレーンを留置して廃液管理をしっかりと指示する。
骨折に関しては固定で済むもの、プレートなどで処置が必要な患者を鑑別して、手術に向かう。
開放性の複雑骨折なども多く、非常に手ごわかったが、プレート、創外固定、ピンニング、骨折の種類状況に応じて様々な方法で治療を行う。
もちろん術後の管理も非常に大事だ。
適切な抗生物質の使用は遵守する。
「よし、軽症例も診療してくぞ、見落としがないようにな」
脳震盪などの症状が時間経過とともに悪化したりする可能性だってある。
これ以上の犠牲の拡大に結び付けないように丁寧に話を聞いて処置をして処方していく。
「先生、以上で全員です」
「おお、そうか、そしたら俺はオペした人見回って入院患者の処置をするから、看護師さんたちは休んでもらって」
「は、はい……すみません先生……」
「いいよいいよ、もう二日もぶっ通しで動き続けてるんだから。
俺はなんかこっち来てから調子いからやっとくやっとく。助かったよ」
「す、すみません……」
ラッテがフラフラして倒れそうになったので思わず受け止める。
入院室のベッドは埋まっているので、診察室のベンチに寝かしてあげる。
外に出ると看護師さんたちが廊下でつぶれていた。
「ああ、お疲れ様……本当にありがとう……」
俺は迷うことなくパソコンを開いて病院の拡張を選択する。
増えたベッドと仮眠室にスタッフを寝かせて患者たちの処置へと当たる。
結局これらの作業に落ち着きを取り戻したのは5日後だった。
明日も18時に投稿いたします。