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第19話 狼煙

今日は日曜なので18時19時20時に投稿しています(3/3)

 ゴブリン隊は大体想定した場所で陣を張り始めた。

 斥候と思われる少数の部隊が壁に接近してきたので弓で威嚇しておいた。

 こちらに弓という遠距離攻撃手段があっての防壁と堀があることの意味をしっかりと印象付けておく。


「先生、あの距離なら頭打ち抜けたよー」


「いや、だめだめ、こっちにこういう手段があるってのをわかってもらえればいいんだから。

 迂回のために部隊を分けたりしてくれないかなぁ……そうすれば各個撃破が楽なんだけど……」


「地平線に達するほどの防壁を築いたのは先生でしょ、俺なら迂回なんて確かめる気も無くなるぜ」


「敵は以前に堀で散々な目に合っている。同じ愚は取らないだろう」


「いまごろ対策を必死に考えてるだろう。それでも対策はそうそう生まれない」


「犠牲覚悟の特攻しかなくなるわけだ」


「ただ、それではこちらの深くまで呼び込むのは難しい……」


「そう、だから俺が、前回あれだけ派手に名乗った俺が戦闘で討って出れば」


「ガブリ、と食いついてくるわけですな……先生本当に食いちぎられないでくださいよ?」


「大丈夫。設楽先生には私が付いてる」


「姐さんがいるなら安心だ。こっちは相手をのーんびり待ってますよ」


「リッタ様、どうかご武運を」


「ありがとうパーシェット。まぁ敵を煙に巻いて逃げ出すのはうちの部隊の得意技だからね」


 リッタの隊はレンジャーとかハンターとか罠のスペシャリストとかそういった人たちで構成されている。

 さらに日々リッタに厳しく、そう厳しく訓練されているから個々の能力、特に必ず生き残る能力は非常に高い。

 かくいう俺もその訓練じごくに強制的に参加させれら、いえ参加させていただいている。

 皆にはたとえ一緒に死地に行っても、逃げ帰ってきてほしいと思ってる。

 俺自身もどんなことしても逃げ帰るつもりだし。


「さーて、俺たちの出番だ。行くぞ」


 闇夜に紛れて俺たちは門から討って出る。

 ゴブリン達は斥候が弓で威嚇されたために常時見張りは立てていないようだった。

 あれだけの防壁と弓を用意して討って出てくるって言うのは普通ならないよね。

 

 全身黒ずくめの集団は、薄い星明りの下であっても視認するのはなかなかに大変だろう。

 敵陣が確実に見える範囲まで接近する。


「それじゃぁ、穴を作るから待っててね」


 俺は収納で前方に穴を作っていく。

 ()()()()()()()()()

 そう思ってくれればしめたものだ。

 地面に伏せた状態で待たせるのは申し訳ないが、30分ほどで作業はおわる。

 敵陣と俺たちの間には5mほどの深さ3mほどの穴を作る。


「よし、それじゃぁ。作戦開始だ。合図を」


※よい子は真似しちゃだめだよ。


 水風船にストーブ用の灯油を入れた風船をみんなで陣に向かって投げつける。

 すっごく簡単な仕組みの投石機、棒による遠心力を利用してより遠くまで投げつけられるようにしている。

 そしてラッテが火矢をその部分に打ち込む。

 簡単な方法だが、一時的に炎が派手に広がるからこの世界の生き物にとっては脅威だろう。

 派手に燃え上がる灯油、現実で起きたら大惨事だ。

 すぐに建物にも火が広がっていく、陣の中に混乱が広がっていくのがわかる。

 それから矢を射かける。

 慌てふためくゴブリン達の頭上から矢の雨が降り注ぐ。

 

「悪いけど、これ、戦争なんだよね」


 どっかで聞いたようなセリフを叫びながら一心不乱に弓を射る。

 パソコンで狼たちのいる場所はわかっている。

 ゴブリン達よ、せっかくそろえた狼達。無効化させてもらう。


「ラッテ! アレを打ち込め」


 一部の部隊が、また別の液体の入ったガラス容器を狼犬舎に向かって飛ばしていく。

 気をつけないと、これが自分たちの足元で割れたら大惨事だ。

 ガラスの割れる音がしてしばらくすると、狼たちの悲鳴が聞こえてくる。


「ごめんよ、臭いよね……」


 もっとも単純な方法、アンモニアを投げつけた。

 強烈な臭気は嗅覚の敏感な狼たちの行動を阻害するだろう。

 風向きもちゃんと考えていたんだけど、火を使ったせいで、風が巻いてしまいたまに悪臭が香る。

 目に来るほどではないが、強烈なアンモニア臭、これが鼻先にばらまかれたことを考えて敵ながら哀れに思う。


「おっと、ようやく迎撃に来たな! 皆、撤退準備!」


 陣から武装した兵が出始める。

 パソコンのモニターで距離を確認しながらタイミングを計る。


「今だ!!」


 わずか50名ほどの部隊の斉射でも最も効果的なタイミングで放てばかなりの効果が出る。

 さらに周囲は暗闇、突然風切り音とともに飛来する矢は恐怖心を煽るだろう。

 さらに、くだらない方法だが、その恐怖心を煽ることにする。


「爆竹点火! 投擲ー!!」


 偉そうに言ってるけど、花火で遊んでいるようなもんだ。

 しかし、見たことも聞いたこともない相手からしたら、敵から投げつけられれたものが爆発音を上げ始めれば、大混乱を生じる。

 都合よく弓の効果範囲で大混乱を起こして停滞している兵士にさらに弓を浴びせる。


【見苦しいぞ!!! 伝説のニンゲン相手! 何が起きても狼狽えるな!!】


 戦場に怒号が響く。

 次の瞬間、まるで一切の音が無くなったかのような気分になる。


【うおおおお!!】


 ゴブリン達は爆竹の音にもものともせずまっすぐにこちらへ向かってくる。


「やばい! 総員撤退!!」


 やっぱり出てきていた。

 老将ゴーゼム。

 俺は部隊に撤退を命令し、拡声器でゴーゼムに訴えかける。


「久しぶりだな! この間は時間がなかったが、今回は準備を整えた!

 お宅の国を丸ごといただく! 防ぎたかったら今ここで俺を討ち果たすんだな!!」


 皆、4足歩行で全速力。俺もバギーを取り出しその列に加わる。

 作戦の第一段階は、大成功と言っていい。

 これからどう動いてくるか……

 戦いの狼煙は、敵陣からもうもうと上がっていた。

 

 


明日も18時に投稿いたします。

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