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8.ダンジョンを攻略しちゃった


「よし……次に緊急度が高いのはこれか」

「ダンジョンですね」

「そろそろ実戦もやっていかないとな」

 そんな俺たちが手に取った依頼票に会長のゼービスがビビりまくりっすね。


「そ……そのダンジョン、もうみんな諦めてて……」


「でもこのダンジョン、ミスリルが採れるんでしょう?」

「はい、鉱山だったんですけど、魔物が住み着いてしまいまして……」

「魔物が討伐されれば、また採掘できるようになると」

「はい、そりゃそうですが、きっとボスクラスの魔物がいます」

「わかりました。じゃ、行くか。これは日程無しで」

「はい、お願いします……。本当にお二人で?」



 やってきましたミスリル鉱山。

 ミスリルがチタンだとわかった以上、どんなふうに産出するのかすげえ興味があるからね。見てみたいわ。


 今まで俺武器は十手しか使ったこと無くて、魔物もほとんど物理魔法で片付けていたわけだけど、今回から初めてナイフを使うよ。

 魔王ルシフィスが俺の棺に入れてくれた全長40cmのハンティングナイフ。

 まず、三層のハガネを重ね合わせて折れず、曲がらず、よく切れる。

 これに絶対強化がかけてあり、絶対に壊れたり折れたりしなくて岩も鉄でも真っ二つ。

 研ぎなおす必要も無いよ。錆止めもかけてある。

 あと、これで切りつけても不思議なんだけど血が出ない。だから汚れない。返り血も浴びません。チートすぎます。

「それじゃ獲物の血抜きができないだろ!」と思うでしょ?

 血抜きをするときはルシフィス、手刀ですぱすぱやってました。素手で。

 なんなんだよあいつ……。


 そんないい自慢のひと振り、死んだ俺に惜しげもなくくれてありがとう。

 俺の十手のことを聞かれたとき、別の異世界に召喚されて、その時持ってた武器を前の妻が棺に入れてくれたのがそのまま異世界に一緒についてきたって話をしたことがあった。

 本当のこと、なんでも話せる親友だった。

 俺が死んで、また別の異世界に飛ばされたときのためにって持たせてくれたんだろうな。ありがとな俺の親友……。

 案外今頃は俺が死んでも悲しまず、また異世界で楽しくやってるはずだって、思ってくれてるかもしれない。



 ルナのマジックショートボウには、俺の【バリスティック】をかける。俺のオリジナルの弾道計算魔法だ。レーザーサイトみたいにどこに当たるかが弾道曲線で視覚化される。レーザーサイトは直線なのに対して弾道は曲線なので、距離が変わるとレーザーサイトは当たらない。でもこれは弾道に合わせて弾道曲線になってるからレーザーサイトと違って距離によって当たる場所がずれる心配はない。暗いところでしか見えないレーザー光と違って昼間でも見えるし本人にしか見えないから敵にも気づかれないぞ。

 ついでに【アキュラシー】も。これは空気密度を変えて弾丸を目標に誘導して命中率を上げる魔法だ。弓矢を使うルナにはピッタリだな。


 基本、俺が前衛で【マップ】を展開しながら先導する。

 攻撃はルナにやってもらう。ルナのレベル上げが目的だからね。

 要所要所で照明弾(ライトアロー)を撃ってもらって坑道に突き刺し明かりにする。一日ぐらいはずっと光りっぱなしなんで便利だぞ。

 ルナの後ろには【ウォール】を展開する。

 これで後方からの不意打ちがあっても大丈夫だ。

 敵はいろんなやつがいるけど、だいたいは熱源探知魔法の【ホーミング】で位置がわかるので前もってルナに指示し、遠距離射撃で倒してもらう。


 地下B1は吸血コウモリ。

 うじゃうじゃいるけど、これは特訓なので全部弓で根気よく倒してもらう。

 鉱山だからな、崩落とか危ないから爆発系の魔法は使いたくないんだよな。

 攻略が終わった坑道は、【ウォール】で塞いでおく。

 飛んでる奴には当たらないけど、やつらもいつまでも飛んでられないんで必ずどこかに留まるのでそこを狙う。たまに失敗もあるけど、だいたい一撃で倒してるな。

 ぐっじょぶぐっじょぶ。


 地下B2はスライム。

 矢が当たるとどろっと液状化して溶けちゃうね。

 復活すると面倒なので、俺の【プラズマボール】で燃やしておくよ。

「レベルが61になりました!」

 うん、雑魚なので上がるの遅いね。

 のんびり休みながら行きましょうかね。


 地下B3は虫ですね。ゲジゲジのでかいやつ。80cmぐらいか。

 気持ち悪いんでルナが悲鳴を上げる。

 我慢してくださいね。メンタルも鍛えましょう。

 動きが速いんで、飛び掛かってくる奴は俺がナイフですぱんと動けない程度にダメージを与えてやるぞ。

 カサカサ動くやつについては半分ぐらいはルナの弓も当てられるようになりました。

「レベルが62になりました!」


 地下B4はゾンビ犬ですね。

 アンデッドならルナのほうが得意かな。

 聖なる結界魔法? みたいなやつを展開してもらってどんどん進んでいきます。

 結界に触れたやつが勝手に光って四散するのでこれは楽っす!

 チートだなぁ……。

「レベルが62……63になりました!」

「お昼にすっか」

 時間はよくわからんけど半日ぐらいはたったか。

 坑道のちょっと広い場所で全方向にルナの結界魔法をドーム状に張り、昼食の準備をする。

 鶏肉を薄く焼いてパンにチーズとレタス、トマト、ソースとかをからめて簡単なクラブハウス・サンドイッチを作った。作るところをルナが興味津々で見ております。

「私も作れるようになりたいなあ……」

「そのうちね。今はレベル上げに専念してもらおうか」

「はーい」

「食べて食べて」

「はいっ。んむんむ……おいしいです!」

「お茶も」

「お茶ぐらい私も入れられますよ」

「じゃあ次から頼むわ」

「はい! あ、レベルが64になりました!」

「おめでとう」


 食事してる間も、匂いに誘われてゾンビ犬が突撃してくるんだけど、全部ルナの結界にぶつかって勝手に消滅していく。なんなんだよこのゾンビ犬ホイホイ。

 地下B4のゾンビ犬を一掃したところで、昼食を取った場所に戻って夕食を取り、野営する。

 今夜の夕食は丸ごとキャベツとベーコンのコンソメスープ煮。キャンプ料理の定番の一つですな。パンと合わせて食べるスープになりました。

 周りに空気分子固定の結界魔法【ウォール】を入念に張り巡らせて、ふかふかの見えないエアーマットを作ると、ルナが「あの……もっと大きいベッドにしてください」と言う。

「なんで?」

「やっぱり怖くて……」

 ……うんしょうがないね。昨日は俺が怖くて一緒に寝てもらったもんね。

 ってあれは勝手にルナがベッドに……、うん、あんまり深く考えちゃダメですね。地雷原、地雷原。

 二人で二つの寝袋でくっついて、眠りました。

 だんだんルナが可愛くなってきている俺。

 地雷原、地雷原。

 ふんわりと、温かく、柔らかい地雷原。

 我慢我慢我慢。ここはダンジョン。



 どすんっ。

 いきなりエアーマットから落っこちて目が覚める。

 【ウォール】の有効時間を10時間にセットしておいたからな。目覚まし時計みたいなもんだな!

「いったあー……」

「たっぷり寝られたでしょ? さ、朝飯朝飯」


 周囲を探ってみたけど、やっぱりゾンビ犬いなくなってるな。

 【ウオーター】で水球を作り、顔を洗って、さっさと朝食にして探索開始。


 地下B5 巨大クモだな。人間よりもでかい。

 ゾンビ犬の次は巨大クモかよ。バイオハザードかい!

 クモの巣がすごいので、でっかくて薄いぽよんぽよんと弾む火の玉の【プラズマボール】を作って前に転がしていく。クモの巣が焼き払われていくので通路がきれいになるぞ。これで後で作業する作業員さんたちも仕事が楽になるというものだ。

 生焼けのクモが這ってくるけど、ルナの矢で近づく前に百発百中だね。

「レベルが66になりました!」



 地下B6、オオトカゲ。

 ワニではないな、オオトカゲ。

 的がでかくて、当たりやすいぞ。

 全部一掃してから、昼飯にします。


 地下B7、巨大ヘビ。

 ルナが悲鳴を上げます。大きすぎますね。

 収縮魔法の【コントラクション】で小さくしましょう。

 原子レベルで物質の密度を高め、大きさを収縮する魔法だ。小さくなるけど重さは変わらないという便利なのか不便なのかよくわからんとよく言われる魔法。

 荷物を運ぶのに使うと便利だが、生物に使うと自重で身動きできなくなり、呼吸、循環系に大ダメージというなかなか使える魔法だ。

 身動きできなくなったところでやりほうだいの集中攻撃。

「レベルが70になりました!」

 中ボスですか。この階層には他に敵がいませんでした。

 そろそろアイテムボックスに獲物を回収していきましょうかね。


 ここでもう一泊します。気温が低く寒いので寝袋を広げてつなぎ合わせ、二人で一つの寝袋に入って密着して眠ることになりました。温かいし柔らかいけど二人とも狩りのせいでかなり生臭くなってるのでその気にはなりませんね。


 翌朝。

 地下B8、終点です。

 地下水が貯まって沼になってる。ラスボスだな。巨大サンショウウオっす。

 ぬめぬめとして気味悪く、しかも電撃を放っておりますな。

 これはアレですね、食べたらアレになるやつです。

 強力な精力剤になりますので、食べると地雷原が爆発してしまいます。注意しましょう。

 これも【コントラクション】で小さくしてからルナに攻撃してもらう。

 ロープをかけて、沼から引きずり出し、泥だらけの体を【ウォーター】でよく洗ってからアイテムボックスに入れる。


「終了――!」

「は――! お疲れさまでしたーっ」

 二人でハイタッチして笑う。

 

 よく注意して観察はしてたんだけど、結局どれがミスリル鉱なのかは俺にはわからなかった。プロが見ないとわかんないんだろうな。

 まあ、これで採掘が再開できる。ミスリルの装備も少しは安くなるだろう。


「レベルはいくつになった?」

「73になりました!」

「新しく使えるようになった魔法は?」

「えーと……、今まで使えてた魔法が一つずつ上位魔法になってます」

「そうか。十分だね。封印とかの魔法は?」

「もっと必要ですか……。上げてみないとわからないですね……」

「じゃあ今後もレベル上げだね」

「それにしても、佐藤さんと一緒だとダンジョン攻略も簡単すぎて拍子抜けです」

「そうかなぁ。けっこう悲鳴上げたりドタバタしてたりしてたじゃない」

「あ、あれは魔物が気持ち悪いからです!」

「はいはい」

 うん、いい訓練になったな。



 ルナテス様が、地面に魔法陣を描いていらっしゃいます。

 瓶から聖水をタラタラと垂らしてます。

 出来上がってから、中央で祈ると、魔法陣がふわっと光に包まれて、消え、跡が刻まれてます。

「これでもう、この鉱山には魔物は出ませんから安心ですよ」

 へー……そんなこともできるんだ。凄いね女神様。


 首都、ラナスに帰ったときはもう日が暮れてた。

 いっぱい働いたので、明日は休み、自由行動ということにして、宿屋で別れた。

 ルナは不満げだったけど、うん、少し距離を取らないと俺が爆発しそう。


 今夜はですね、ちょっと趣向を変えて、熟女人妻専門店にしましょう。

 耐性を付けるためです。もう少し我慢できるようにならないとね。

 そのための訓練です。勘違いをしないでくださいね。

 この先も地雷原を回避するためには必要なことなのです。

 では、おやすみなさい!



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