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57:赤と黒

「貧血だああぁぁ……」

 宿の丸テーブルの上に、エンドーは溶けていた。

「お前は、どこへ散歩行けばあんな状態で帰ってこられる?」

 マハエが心底呆れた声で言う。

「まあマハエ、彼も彼なりに頑張ってたんだと思うよ。町の外で過激なトレーニングしてたんでしょ」

 と言ったのはハルトキだ。


 宗萱達から何の指示もないまま、日は暮れた。

 エンドーは早めの夕食でいつもの二倍食べたが、昼の戦いでのダメージは消えていなかった。

 傷はすぐに塞がるが、流れ出てしまった血液は、簡単には補充できない。


「案内人ー、何か言い訳を考えくれ。オレ、頭、ボーっと、しちょー……」


 エンドーは崩れた。

[しょうがないですねぇ。実はエンドーさん、走るステーキを追いかけていて、なんとバナナの皮ですべって転び、ちょうど落ちていたトンガリ石の上に全力ダイビング! いやぁ、あれは言葉では言い表せないほど、痛そうでしたー]

「……おいおい、小学生でも信じねぇぞ。つーかそれ、まるでオレがマヌ――」

「へぇ、そんなことがあったのかぁ」

「ごめんね、エンドー君、過激なトレーニングだと勘違いしちゃって」

「過激なトレーニングだ。それ以上でも以下でもない」

 それからエンドーは小声で案内人に、

「今日の件、報告したのか?」

[いえ、今回は特別目を瞑りましょう。あのジンとかいう子も救われたわけですし。――ですが、今後また相談なくあのような行動に出た場合、わたしも黙っているわけにはいきません。わかりましたね?]

「…………ああ、わかった!」

[その間はいったい……]

「なになに? エンドー君、何してたの?」

 マハエが食いついてきたので、エンドーは無理矢理、話題を変える。

「ヨッくんは軍本部の資料館へ行ってたんだろ? 何を調べてたんだ?」

「うん、ちょっと過去の事件をね」

 そう言って、ハルトキはポケットからメモ帳を出して開く。エンドーが訊くまでもなく、報告するつもりだったのだろう。


「ニュートリア・ベネッヘという組織について調べてたんだよ。やつらが起こした事件、レベル1の事件から調べていくと、数え切れないほど名前が挙がる。器物破損、暴行、窃盗、強盗。――まあ、過激な不良集団の例だね。レベル4以上、つまり殺人とか凶悪な事件は、今のところ犯していない。軍の記録では、ね」

「まあ、今は誘拐、ウィルステロ、監禁、殺人未遂も加わる」

 エンドーが鼻を鳴らした。

「軍から特別警戒されるほどの組織ではなかった。けど、調べていくうちに、とある別の組織の名前が挙がった。それが『レッドキャップ』」

「窪井が勧誘されたっていう、凶悪組織か」

「そう、それで次にレッドキャップについて調べたんだ。……驚いたよ、レベル5―― つまり、超凶悪な組織。しかもその大半が、まだ十代の少年だったらしい」

「十代!? オレ達と同じような子供が……?」

 驚愕するマハエと、エンドーも、

「レベル5って、殺しをやってたってことだよな……」

「うん、大林さんも言っていたけど、金のためなら人をも殺す殺人組織。厄介なのは、やつらに殺しを依頼する人達のほとんどが、有名な富豪や貴族。その中には軍を支援している名家の名もあり、軍は簡単に手を出せないでいた。けどレッドキャップは約二年前に壊滅。組織同士の紛争によるものと記されてる」

「……田島弘之や窪井が絡んでた?」

 マハエが眉をひそめて言う。

「それはわからない。ただ、レッドキャップが関与していると思われる最後の事件は、フーレンツのとある道場の焼き討ち。道場主一家を含め、三十五人の犠牲を出したこの事件から一ヶ月ほど後に、レッドキャップの壊滅が確認されている」

 ハルトキはメモの最後に、

「ニュートリア・ベネッヘは、レッドキャップの残党によって結成された組織であると言われてる」

 そしてマハエとエンドーを見た。

「こう考えると厄介だよね。ニュートリア・ベネッヘは、超凶悪組織、レッドキャップの血を受け継いだ組織」

「そうだな。二年前まで殺しを専門としてたやつらが、少なからずニュートリア・ベネッヘに混じってるってことか。……そんなの、不良集団ってレベルじゃねぇぞ」

「戦うときには、容赦しない。ってことか……」

 マハエは目を閉じてうつむいた。


「(そんなやつらと、どう戦う?)」



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