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13:敵戦力・未知数

「また一つ、仕事が増えてしまいました……」

 宗萱は腰に手を当てて、新たにできた岩の山を見つめていた。

「まあ、敵を倒せたんだから、結果オーライでしょ」

 マハエが言う。

「ええ、少し無茶でしたが、あの状況からすれば、良い戦法だったと思います。後でSAAPにでも処理させましょう」


 ――マハエが起こした落石によって、赤い対SAAPは完全に沈黙した。

 『壊波槍』を解き、疲れたと言って座り込む。宗萱も痛む傷を押さえて岩に腰を下ろした。

 すぐに、出血している傷に包帯を巻く宗萱を見て、マハエが言う。

「魔力があるんですから、怪我なんてすぐに治るんじゃ?」

「わたしやグラソンは、そうはいかないみたいです。かすり傷でも、完全に塞がるまで数時間かかります」

「ふーん……」

 マハエは完全に傷が消え失せている自分の腕を見た。

 『魔力の性質が違う』という、宗萱の言葉を思い出し、「何が違うんだろ?」と首をかしげた。


「――おや? これは……」

 宗萱が、足元で赤く光る、小さな石を拾い上げた。

 マハエも近くで見る。


 赤い宝石だ。


 崖に埋まっていた物だろう。マハエはそう思った。だが、宗萱は何か驚いた表情をしている。

「この宝石は、新型SAAPのグローブにはまっている、隊を識別するための物です」

「え? それがなぜここに?」

「……赤い宝石は第一部隊の象徴……」

「第一部隊? ……たしか、連絡が取れなくなった、消えた部隊も――」

 宗萱は深いため息を吐いて、対SAAPを押し潰した岩を見た。


「どうやら、先ほどの赤い対SAAPは―― 消えた新型SAAP、第一部隊の隊員のようです」


 口を開いて唖然とするマハエ。

「……どういうことなんだ? まさか、部隊が一つ、窪井の手に落ちたってこと?」

「そういうことです」

 だがマハエは腑に落ちない。

「全然形が違うじゃん。死神型は旧SAAPだろ?」

 すると、一部始終を見聞きしていたのか、案内人が、

[わたしがお答えしましょう。新型SAAPというのは、もともとあのような死神型でつくられたものでした。ですが、この世界で行動するにあたり、自然なデザインにつくり変えたわけです]

「なるほど、説明ご苦労。けど、それがなぜ、今になってもとの姿に?」

 案内人はすぐに答える。

[ウィルスの影響だと考えられます。宗萱さんさえ手こずるあの強さ。新型のSAAPを、ウィルスでさらに強化したのでしょう]

 マハエは呆然と立ちつくし、思いを巡らせて、案内人に訊く。

「第一部隊って、何人いる?」


[一つの部隊は、十人で編制されています]


「十人……」

 ショックを受ける彼に、宗萱が追い討ちをかけるように言う。

「しかも、部隊の隊長には、特殊なデータが組み込まれていますから、先ほどの対SAAPよりも、はるかに強力でしょう」

 真っ青になるマハエ。

[また、仕事が増えましたね]

 他人事のように案内人が言う。

 マハエはうなだれた。






 その頃、トンネル内での戦闘はとっくに終了していた。


「言え。窪井はどこにいる?」


 大林が手下『A』を壁に押し付け、尋問する。

 他二名は、ハルトキの『縛連鎖』で捕縛され、大人しく座っている。

「…………」

「あぁ!? 答えろ!」

「……けっ、だ、誰が吐くかよ……!」

 見ているハルトキさえツバを呑むほどの、凄みのある尋問。ミチルはそれを楽しそうに眺めている。

 だが、さすがに窪井の手下だけあって、なかなか白状しない。

「命落とさねぇ程度になら、いくらでもいたぶってやれるんだぞ?」

 大林はニヤリと笑ってみせる。

「……そ、そんな脅しは通用しないぞ……! 吐くくらいなら、死んだほうがマシだ!! 正直言って、頭領のお仕置きのほうが恐ろしい!!」

 大林は肩をすくめると、縛ってある手下『B』と『C』に親指を向けた。

「それなら、お前の仲間が一人ずつ、苦痛の悲鳴を上げることになるぞ?」

「……けっ、そんな脅しも通用しねぇ! そいつらに何をしても、オレは何も吐かねぇし、口を閉ざしたままくたばるんなら、そいつらも本望だろうよ!!」

 手下Aはフンと得意げに鼻を鳴らした。

 大林はギロリと、二人の手下をにらんだ。


「オレ達の隠れ家は、フーレンツ南西の『ネーベル山』にある。登山道から少し外れたところに山小屋があって、そこから地下通路を通れば行けるよ」


 『B』がぺらぺらとしゃべった。


「えええぇぇぇ!!!? なにあっさりと白状しちゃってんのおぉぉ!!?」


「安全第一でしょ」

「てめぇの安全だろぉ!!?」

 大林の腕に絞められながらも、手下Aは怒声を散らす。

「なるほど、『ネーベル山』か」

「いやいや、嘘だよ嘘!! あいつ大嘘つきなんだよ、真に受けないほうがいいよ!!?」

「ほう? 嘘なら、なぜ嘘だとオレに教える?」


「あ。」


 手下Aは言葉を詰まらせた。そこへ、手下Bがやれやれと首を振って、

「キミの余計なリアクションのせいで、嘘じゃないとバレてしまったじゃないか」

「なにオレに責任なすりつけようとしてんのぉ!!!?」

「もー、いーじゃん、『ゴトー』。痛いのはやめようぜー」

 手下Cも加わり、壮絶な言い争いが勃発。

 本当に状況がわかっているのか。大林やハルトキは完全にそっちのけだ。


「えぇい! 黙れ!!」


 大林が一括し、ようやく静まった。

「ハルトキ、そいつらを立たせろ。本部へ連れて行こう」

「はい。――ほら、立て」

 ハルトキの言葉に素直に従う手下達だが――


「逃げるぞ、撤退!!」


 手下Aが白いボールを投げると、トンネル内を一瞬で白い光が支配した。

「しまった! 閃光弾か!」

 腕をすり抜ける手下に、大林は見えない目で手を伸ばすが、捕らえることはできなかった。


 足音が走り去っていく。


 ――なす術もないまま、完全に気配が消えたころになって、視界が元にもどった。

 手下はハルトキの鎖さえもすり抜け、そこに一人の姿もなかった。


「くそっ……」


 窪井と同じ手で逃げられた。二度も同じ手で……。大林は脱力して座り込んだ。

「でも、無駄ではなかったでしょ。大きな手掛かりも得ましたし」

「そうだな。『ネーベル山』……、そこに窪井の隠れ家がある」

 大林は気合を入れなおし、立ち上がった。

 さっぱり話のわからないミチルが、小さく首をかしげていた。



 宗萱のチームと大林のチームは、『ヘルプスト』の町で合流。

 その町の人口は港町とほぼ同じくらいだろう。十字の道を大通りにして、レンガ造りの住宅が立ち並んでいる。

 ミチルと別れた大林とハルトキは、宗萱に『ネーベル山』のことを報告した。

「確かな情報のようですね。ですが、手下に逃げられたということは、こちらに情報がもれたとこが、敵に知られてしまうということです」

「そうなんだよなぁ」

「それに、厄介な敵も現れました。窪井側の戦力は、とても強力です。デンテールを上回るレベルかもしれません」

 全員の顔が強張った。

「事態は急を要しますが、慎重も要します」

「つまり、ヘタに動けないと?」

 大林は目を細めた。

「そういうことです。ですが、もたもたしてもいられません」

「…………」

「本部へ、もどりましょう」



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