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義弟と私

グランディア王国に戻って数日が過ぎた。


魔族に壊された家の復旧もだいぶ進んで、少しずつだがみんな元の生活に戻っていっている。

そう言えば私のあの光の波動は、あらゆる傷を治し死にかけていた者を救う力があり、そして闇の化身である魔族には触れれば消滅させてしまう程の力があった。しかし、あれから頑張って出してみようと何度も試みたけど全然出来なかったのだ。


ユリウス殿下達は魔族との和平条約の手続きで毎日忙しそうだ。

そんな中、明日の夜に国を上げての祝賀会が城で行われる為、一応主役(?)らしいので出席することになっている。出来れば出たくないのだが・・・。

その為久しぶりにアズベルトの屋敷で暫く生活している。

そして今お母様が明日の祝賀会の為のドレスを、朝からずっと張り切って選んでいるのでいい加減ぐったりしている所だ。やっと納得して解放してくれたのが夜も遅い時間だった。

私は自分の部屋に戻り寝間着に着替えて速攻ベットに倒れ込んだ。


お母様嬉しいのは分かるけど、張り切りすぎだよ・・・。


私はそのまま疲れて眠りに就こうとしていたのだが、扉をノックする音に仕方がなく起き上がり、ガウンを羽織って扉に向かった。


「誰?」

「義姉さん僕だよ」

「ヒューイ」


ヒューイだと分かり扉を開けて中に招き入れる。

最近城で殿下達と政務をしており、その為帰りが遅かったのでまともに会うのは久しぶりである。


「夜遅くにごめん、どうしても話したい事があったんだ」

「話したい事?まあとりあえず立ち話もなんだから座って」

「・・・・」

「ヒューイ?」


ヒューイに座るように促したけどその場から動こうとしない。


「どうしたの?」

「・・・義姉さん、明日の祝賀会が終わったらまた屋敷を出ていくつもりだよね?」

「・・・・」


そう、私は祝賀会が終わったら直ぐにアルカディア王国の自分の店に帰るつもりでいるのだ。だが、誰かに言うと引き留められそうなので誰にもまだ言っていない。当日言って引き留められる前にすぐ出発するつもりだった。だから誰にも分からないように荷物を1つに纏めて隠してある。しかし、ヒューイにはお見通しだった様だ。


「義姉さんどうして?せっかく帰ってきたのにまた出て行くなんて!」

「ヒューイ、ちょっと落ち着いて!」


ヒューイが真剣な顔でどんどん私に近付いてくる。私はその気迫に押されて後ろに下がって行く。


「ねえ、僕が嫌いなの?」

「べ、別に嫌いでは無いけど・・・」

「なら、好き?」

「・・・義弟としてなら好きだけど・・・」

「・・・男としては?」


とうとう壁際まで追い込まれてしまった。それでもヒューイは近付くのを止めず、私の顔の両横に手を置いて私を囲う様にして見つめてくる。


「・・・ねえ、男としてはどう思っているの?」

「それは・・・」


ヒューイの真剣な眼差しに思わず言い淀んでしまう。するといきなり私を横抱きに抱え上げた。


「ちょっ!ヒューイ下ろして!」

「・・・・」


私の抗議を無視してヒューイは私を連れて隣の寝室に入っていく。

寝室に入ると私をベットに乱暴に下ろしそして上に覆い被さってきた。


「ちょっと!ヒューイやめなさい!」

「・・・好きだ・・・」

「え?」

「僕は昔からずっと義姉さんの事が好きだったんだ!」

「ヒューイ・・・」

「愛しているんだ・・・絶対あいつに渡さない・・・だから今すぐ僕のものになって!」

「あいつ?」


そう考えていると、ヒューイが私の首筋に顔を埋めてきた。


「ヒューイ待って!お願い話を聞いて!」

「・・・待たない・・・義姉さんは僕のものだ!・・・僕の!僕の!」


あまりの必死な声に、ヒューイを良く見ると少し震えているみたいだ。何だか必死に小さな子がしがみ付いてる様にも見える。

私はそっとヒューイの背中に手を回し、そして義弟が子供の頃泣いていた時に良くしてあげた様に背中をポンポンと宥める様に叩いてあげた。

最初はビクッと反応していたけど、段々落ち着いてきたのが分かる。


「・・・義姉さん、もう僕は子供じゃ無いんだけど」


そう言って苦笑いしながらヒューイは私から身を起こし離れた。

私も上半身を起こし、ヒューイと正面で向き合って真剣に目を見て話す。


「知ってるわよ、でも私にとったらいつまでも私の大切な可愛い義弟なの」

「義姉さん・・・」

「ヒューイ、あなたの気持ちは凄く嬉しい。でも、私にはどうしても義弟以上には思えないの」

「・・・・」

「ごめんなさい。そしてありがとう。出来ればこんな義姉だけど嫌いにならないで欲しいな」

「嫌いに・・・なんて・・・ならないよ・・・」

「ありがとう。家族としてだけど大好きよ」


俯いて肩を震わせて泣いているヒューイをそっと胸に抱き寄せて、泣き止むまでずっと背中を優しく撫で続けたのだった。

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