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光の波動

※少し残虐な表現があります。苦手な方は気を付けて下さい。

突然私の足に繋がっている鎖が引っ張られた。


「きゃあ!」


引っ張られた勢いでその場に倒れ込んでしまう。一体何がと思いながら直ぐに起き上がろうとしたが、それよりも先に何か重いものが上にのし掛かってきて動けなくなる。さらに後ろから髪を引っ張られて顔を無理やり上げさせられた。


「うっ・・・・」


苦痛に顔を歪めながら、私は髪を引っ張ってくる相手を見る。

私にのし掛かってきているのは、全身黒く焼けただれた跡が痛々しく残り、頭には角、背中には蝙蝠の様な羽が生え、憎しみに溢れた深紅の瞳で私を睨み付けてきているこの男は・・・黒装束の首領!!


「・・・ずっとこの機会を待っていた。お前がこの城に来て魔法の発動を封じられているのも知っている。くく、やっとオレの手でお前を殺す事が出来るのだ」


そう言って黒装束の首領はニヤリと口角を上げて笑ってきた。首領は髪を掴んでない方の手を上げ爪を鉤爪の様に長く伸ばしそして喉に当ててくる。


これはヤバイ!!


今にも喉を掻き切られそうになり恐怖を感じていると、ふと体に掛かっていた重みが無くなり髪も開放され、それと同時に爆発音が響く。

私が音のした方を素早く見ると、丁度闇の珠が壁にぶつかり爆発していた所だった。近くには咄嗟に逃げたらしい首領の姿が。

思わずゼクスを見ると、首領に向かって掌を向け次々と闇の珠を撃ちだしていた。次から次に飛んでくる闇の珠を首領は必死に避けているが目線は私から離さない。

そして、攻撃の合間の隙を見計らい素早い動きで私に鉤爪の手を伸ばしながら襲いかかってきた。

私は咄嗟に逃げようと動くが、鎖に足を取られまた倒れてしまう。もう目の前まで爪が迫り思わず目を瞑ってしまった。


今度こそ駄目だ!!


そう思った次の瞬間肉を貫く音が聞こえた。

私は来る筈の痛みが来ない事に不思議に思い、恐る恐る目を開けそして絶句した。

目の前にはジークフリード様が私の前で背を向け両手を広げて立ち塞がっていたのだ。そして、そのお腹から背中にかけて手が突き抜けている。

首領はまた闇の珠が飛んできた事でそれを避け一旦その場から離れる為ずるりと手を引き抜いた。するとジークフリード様が後ろに傾いだ。私は咄嗟にその体を受け止める。


「ジ、ジークフリード様!!」

「うっ・・・ゴホッ・・・ハアハア」


ジークフリード様は私の膝の上で口から血を吐き苦しそうにしている。


今こそ治癒魔法使いたいのに!


何も出来ない自分が悔しく、目から涙が止めどなく頬を流れ落ちる。

ジークフリード様が下から弱々しく私の頬に手を添え微笑んだ。


「・・・良かった・・・今度こそ・・・君を・・・守れた・・・・・・」


するりと手が頬から落ちジークフリード様が目を閉じる。

恐る恐る頬に触れると段々冷たくなっていく。


「・・・ジーク・・・フリード・・・様?・・・・・・い、嫌ーーーーーーーーー!!!!」


パリン


私の足元から何かが壊れる音を聞いたような気がする。

その瞬間私の中から溢れんばかりの光の波動が現れ、当たり一面を光で埋め尽くした。


「ウギャァァーーーーーー!!」


いつの間にか近づき、私の後ろで鉤爪を降り下ろそうとしていた首領が光の波動の直撃を受け消滅していく。私はその様子を無感情で見ていた。さらに回りをなんの感情もなくボーと見回すと、ゼクスとリカルドが自分の回りに障壁を出して身を守っていて、殿下達が不思議そうに私を見ている。中には自分の体を確かめている者もいた。そんなみんなの様子がまるで夢の中で見ているかの様に現実に感じられない。

その時不意に私の頬に温かい物が触れた。

私はゆっくり下を向き、金色の瞳が私を見つめて微笑んだ。

頬に触れた温かい物はジークフリード様の手だった。


「ジークフリード様?」


ジークフリードはゆっくりと立ち上り、私を抱き起こして立たせてくれた。何だかこれが現実とは思えないでいる。

呆けたままジークフリード様のお腹を見ると傷は綺麗に塞がって治っていた。

私が不思議に思いもう一度ジークフリード様を見上げる。


「この光の魔法はサラの力だよね?この光が闇に墜ちていく俺の魂を救ってくれたんだ。それにこの温かい光のお陰であんな酷い怪我だったのに完全に治してくれたんだよ」


私が魔法を?


私は足首に嵌まっている筈の魔具を見てみるとすっかり壊れて外れていた。


じゃあ、ジークフリード様は本当に生きている・・・無事でいる!


そう心の中で確認して、これが現実だと認識し涙が溢れだした。

そんな私を見たジークフリード様が私を優しく抱き締めてくれる。その温かさと動いている心臓の音を聞きさらに涙が溢れ、私からもジークフリード様をぎゅっと抱き締めた。



光が完全に収まりもうゼクス達もジークフリード様達も戦意を失っていた為、休戦して話し合う事となった。


「サラの魔法発動を抑える魔具も完全に壊れてしまったからな、我にサラをこの城に留める術は無くなってしまった。もうサラの好きにしてよいぞ・・・このままこの城に残っても良いがな」

「ゼクス・・・ごめんね。私帰るよ」

「まあそなたならそう言うと思っていた・・・・・今度は絶対壊れない魔具を研究しよう」


ゼクス・・・最後の一言小さく言っても聞こえてますから!・・・変な生き甲斐見付けないで欲しい。


その後ゼクスとユリウス殿下が話し合っていたが、一度魔族の襲撃を受けた人間側としてはもう襲撃はしないと言われても信用出来ないらしく、全然話し合いが纏まらない。


「それなら一層の事人間と魔族で和平条約結んだら?書面でお互い残るし口約束より安心出来るんじゃないの?」


前世の日本でも昔それで戦争終わったし、私が生きてる間までは特に日本は戦争無かったから。


そう何気に提案してみたら、二人共驚いた様にこちらを見てからお互い真剣に考え出し結果和平条約を結ぶことで話は纏まった様だ。良かった良かった。


そうして話し合いも終わり、私は何だかんだでお世話になったゼクスやリカルドにお礼を言って別れ、みんなでグランディア王国に帰って行ったのだった。

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