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3 ☆乙女☆との出会い

 公園を通りがかるると桜はもう葉桜でいつの間にか通学路は黄緑色がメインの色彩になっていた。正樹が中学に通い始めて一ヶ月が経っている。


 部活動はあまりうるさく言われない水泳部に決めてマイペースに顔を出している。とりあえず問題なさそうな学校生活によって母の洋子からはまだ文句は出ていない。たまに父親の幹雄とネットゲームの話をすると怪訝そうな顔をするが今度のテストで、ほどほどの成績を見せられれば何も言ってこないだろう。(中の上ってラインが一番問題ないんだよな。)


双子の姉、知夏と実夏は正樹よりも五歳年上で今、高校三年生だ。その姉たちを見ていると自分にとって楽な立ち位置がよく分かった。『まあまあ』『だいたい』『そこそこ』を生活基盤としていれば、とりあえず間違いなさそうだ。


 男の割に機転が利き、器用で柔軟性がある性格は姉たちのおかげだろうと思っていた。また女には逆らわないという姿勢も毎日を無難に送る秘訣だった。目下の楽しみの『KR』のことを考えながら正樹は浮足立って家路を急いだ。


 洋子に声を掛け、軽く部活の話をした。どんな先輩がいるかとか今やっているトレーニングだとか。適当に情報を渡した後、正樹は制服を脱ぎシャツとトランクス姿になってパソコンを起動した。

 

ローディング画面が流れ、月姫が登場する。



 もうレベルは三十になっていて初期装備に比べ守備力も上がっていた。本土の獣人国に行っても平気だろう。しばらくこの共通貿易港で狩りをすることもないと思いながら、クエストの取りこぼしがないかチェックしてみた。(ああ。虫退治三十匹残ってるのか)

 大したクエストではないが一応コンプリートしておきたいと思い、狩場に行ってみた。どうやら先客がいるようだ。


 名前は☆乙女☆。ピンクの妖狐で職業はヒーラーのようだ。ヒーラーは攻撃には向いておらず、基本的に攻撃職の回復を務める補佐役になる。一人で狩っているようで効率が悪そうだ。不格好な棍棒を振り回しているが大きなダメージを与えられず、返り討ちに会いながら自分の回復に努めているようだ。(うわー。一匹倒す前に湧いちゃってるよ)

 見かねた正樹は声を掛けた。


月姫:こん

 

 返事がないが止まってこっちを見ているようだ。(ん?チャットできないとか?)

 操作を見ても初心者に間違いなさそうだ。あまりにも下手なのでゲーム自体したことがないのかもしれない。


月姫:チャットできる?Enter押して、普通に文字打つんだよ

☆乙女☆:ありがとお できませた

☆乙女☆:できました


 明らかに初心者だと分かったので、正樹はやはり手伝うことにした。一緒にプレイをするためのパーティの組み方を教えてヒーラーの仕事をしてもらい自分は狩ることにした。


☆乙女☆:すごいいです ありがとうございあmす

月姫:ネトゲ初めて?

☆乙女☆:うn でもおもしろいよ

月姫:その職だと誰か攻撃職の奴と組まないとこれから辛くなるよ

☆乙女☆:そうですかあ 困ったなあ

月姫:ギルドはいったら

☆乙女☆:ぎるど・

☆乙女☆:?


 チャットのタイピングも怪しいが、ギルドのこともゲームの内容もよくわかっていなさそうで正樹は少し困った。(まさか消防かな)

 少しゲームの内容やスキルやギルドについて説明をしてやると☆乙女☆は理解力はあるようで、それ程会話することには困らなかった。


 ちょうどそこへミストが通りがかった。名前の上にギルド名が書かれてある。『アンダーフロンティア』と。


ミスト:hi

月姫:こんちゃ

☆乙女☆:こんいちは

ミスト:俺ギルド入ったんだけど月姫もどう?気楽でいいとこだよ

月姫:ギルドねえ

ミスト:ソロもいいけどね

月姫:ソロも限界あるよなあ

☆乙女☆:わたし入れてもらえmすか・?

ミスト:プリはいつでも歓迎だと思うよ

月姫:じゃあ私も入ろうかしら

ミスト:本土おいでよギルマスいるからさ


 三人で大きな門のゲートをくぐり獣人国に入国し、国王がいるという設定の巨大なレンガ造りの角ばった城の前でギルドマスターを待った。


月姫:かっこいい城

ミスト:たぶんコロッシ城がモチーフだね

月姫:なにそれ

ミスト:説明すると長くなるからググるといいよw

 

 しばらくするとぼわっと効果音が鳴り、ミストの隣にKAZUというライオン顔の戦士が立っていた。ギルドマスターのようだ。


KAZU:こんです

月姫:こんちゃ

☆乙女☆:こんです

ミスト:一応仮で

KAZU:おk


 月姫と☆乙女☆の名前の上にも『アンダーフロンティア』とギルド名が付いた。このギルドにはギルドマスターのKAZUとミスト、月姫、☆乙女☆に後五人メンバーがいるらしい。

 ゲーム自体新しいのでメンバーに新参も古参もなく、あまり気を使うこともなさそうなので正樹はほっとしていた。また一番初めに知り合ったミストが加入しているという、なんとなくの安心感もある。

そして自分が拾ったような☆乙女☆もここで落ち着けると思うとより安堵する。

 これからレベルを上げて強くなっていけばボスモンスターとの戦いやヒューマン国家との戦争、決闘などが待っている。

 正樹は熱くなってこれからのことを思って興奮していた。(面白くなってきた)

 今度の日曜日は何の予定も入っていない。その日は一日中レベリングをしようかなとニンマリしながら画面を眺めた。

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