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【箱】短編

A Whetstone for the Wits.

作者: FRIDAY

 軽く周囲を見回してみただけでも、世の中には十人十色千差万別、種々様々な人々が魍魎闊歩もうりょうかっぽ、見ていて厭きることがない。

 そうして俯瞰ふかんして思うに、それだけの差異を有した有象無象がうじゃらうじゃらと生息する内に、不思議なことに完璧なやからというのはとんと見当たらない。しかしそれも当然のことで、もし世の中に完璧人しか存在しなければ、人間に相違の有りようのなく、従って人間を観察する道楽の成り立たない道理だ。阿呆共の奇々怪々を面白がっていられるうちは、天下太平に完璧超人は有り得ない。

 とはいえ、だからといって初めから完璧たらんとすることを放棄するのも如何なものか。試みる程度の価値はあろうし、そう働くこともまた面白かろう。しかし唯我独尊に完璧を目指すことはムツカシイ。まず世に手本がないことに加え、誰しも自らの不足を己が手で明るみに出すことは本意ではないものである。


 そこで人間観察である。

 先にも述べた通り世に有り余る有象無象はそれぞれ数々の長短を持つ。長所はどうでもいい、捨て置くとして、ここで見るべきは短所だ。短所を短所しからしむるには必ず何かしらの理由がある。その理由を踏まえて、俗人の短所と近しきを己から叩き出し、潰していけば、いずれは完璧人となることであろう。

 全てに秀でている必要はない。短所が皆無であるというのもまた完璧人の一つの形だ。


 例えば。

 私の通う高校はクラスメート、浅北君は眉目秀麗、成績優秀だが運動に才が足りない。

 対して黒川君はスポーツ万能たが学力に乏しい。

 岸田君は性格いいと評判だが実は手癖が悪い。

 山崎さんは万人受けするがぶりっことやっかまれている。

 武多くんはただ寡黙なだけなのに眼光鋭いせいで黒い噂が絶えない。

 名埼さんは黒髪眼鏡委員長だがツインテールが似合っていない。

 浜崎さんは清楚な見かけに反しドSで一部にコアなファンがいる。

 森谷くんは大して格好良くもないがナルシストだ。

 壁田さんは気立てよく優しいがゴリマッチョ。

 山梨くんは柔道部主将の巨漢だが蝶々を見ると錯乱する。

 江岸さんは豪放磊落だがすぐに手が出る。

 留守くんは自信家だが無計画なため成功できない。

 神前さんは神社の娘だが資本主義だ。


 軽く指を折るだけでもこれほどにワケワカラン連中が跳梁跋扈ちょうりょうばっこしているのだ。しかるに私は他山の石を以て玉を攻むるがよし、彼ら彼女らの愚行を見、同じてつを決して踏まぬように細心の注意を払って己を磨けば、私は必ずや非の打ち所ない玉が如き、いやさダイヤモンドが如く燦然さんぜんと輝きの鬱陶しい好青年としてちまたで評判になるに相違ないのだ。


 ふむ。

 私は頷いた。

 頷いて、ちょっと首を傾げる。

「……無理じゃね?」


 

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[良い点] いい点を三つ挙げるならば、 第一に、当然のことを淡々と語る口調と、漢字だらけの文が合致している。 第二に、話している内容に同意しやすい。 第三に、主人公自体も自信の主張から逃げられていない…
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