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ジークフリート

作者: 安岡 憙弘

  ジークフリート

 ワーグナーの歌劇の中の登場人物にジークフリートという青年がいた。Siegfriedと言うのが確かつづりであったと覚えていた。私にとってオペラというものは観劇して楽しむものではなく、いつだって決まってストーリーを大雑把に把握して楽しむものであったのだ。私は昔、予備校の教師からエリザベート・シュワルツコップなるオペラ歌手がいた事を知って初めてオペラの門を叩いた。

 蝶々夫人にはあまり女性としての魅力を感じなかったが、私はオペラなるものには必ずと言って良い程豊満で天使の如き歌声を持つ女性が主人公にばってきされることを想って非常にその一点のみきつけられたのを覚えている。ジークフリートがもしエリザベート・シュワルツコップと共演していたらカッコいいだろうなあと私はおもっていたのだった。長澤まさみに脚本『ダブル・ライン』を製作したのも又、私がジークフリートとエリザベート・シュワルツコップを意識した上でのバレエ脚本を書きたいと思ってのことであった。この原稿が世に出た時点では恐らく『ダブル・ライン』はまだ私の手の中にあると想われるが私はいつだって長澤まさみこそは、プリマかつマリア・カラスをも超えるディーヴァ(女神)であることを信じて疑っていなかったのであった。この世で一番醜い音楽は口ゲンカであると私は未発表の原稿に書いてある。しかし私はいつだってこの世で一番美しい音楽は女性の声から発せられるエロスのようなものであると考えているのであった。長澤まさみの声は絶世的に美しいと私は考えていたのであった。つまりエリザベート・シュワルツコップの作られた美しい声よりも長澤まさみの作られていないまるで男の子みたいな声こそ価値があると私ははっきりと言っておきたいのであった。ジークフリートは神の一種の名前であったように覚えている。違ってたら謝罪します。

ところでそのSiegfriedが初めて地上に降りて来た時に、一人のあるオペラ歌手に恋をした。それが主役の長澤まさみ演じるディンルなのであった。私はディンルをより美しく描くために極力エリザベート・シュワルツコップに似せてディンルを舞台に舞わせた。巨体のソプラノ歌手が宙を舞うのはおかしいと思われるかもしれないが、バレエにはそういう常識は存在していない。何故ならバレエとは技術ではなく心であるから。この台本がなにかの事情で完成しなかった場合には、私はどうしても長澤まさみを主演にしたバレエ脚本を必ず誰かに描いてもらいたい。ルールは唯一つ、男の子みたいな声が際立つように、マイクのビブラートだけは必ずクリアーにしておくこと。そうすれば生のままの声が美しく劇場に響き渡って、天使と悪魔の戦争という主題が小気味よく伝わるであろうから。

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