第八話 天使と悪魔、理性と本能
俺は今不機嫌なフランと向き合っている。
家に帰る道中から何か様子がおかしいとは思ったけど、家について校長と名乗るおっちゃんが両親と先に話をしたいと言う事で俺は部屋に戻った。
おそらくお金の話があるから両親に気遣ってとの事だろう。
まぁそんな感じで部屋で待機しているとフランがやってきた。
「ん? どうしたんだ?」
「……」
「ん? なんだ? 言ってみ?」
「……お兄ちゃん! 私を置いて行くの!?」
「い、いや、置いてくも何も学校に行くだけだし……」
「そんなの嫌! 私……お兄ちゃんの事好き! お兄ちゃんは?」
と言われ、俺は今現在返答に困っている。
と言うか、どうしたらいいのか……フランは可愛いけど『好きだよ』なんて返事は出来ないし。
そんな返事を返したとしたら俺の中で何かが終わってしまう気がする。
でも可愛いのは可愛い……。
俺の頭の中で天使と悪魔、理性と本能が戦っている。
さすがに妹は……。
「フ、フラン落ち着け! 俺はフランの事妹として好きだよ?」
「私が求めてる答えじゃない!」
いやいや、そんなん言われたら俺の頭の中の悪魔が暴れ出すって。
いっその事……違う違う。危ない危ない、そこはちゃんと理性を保て俺!
それにしてもフランまだ子供なのにその考えは早くないか?
「フラン、だってこの世界では兄妹の結婚は出来ないだろ?」
「分かってるけど……」
「フランにはきっと将来強くて素晴らしい男が現れるさ」
「……お兄ちゃんより強い人なんているの?」
……確かに。
無詠唱に小さい時から訓練した魔力。
俺より強い人っているのだろうか?
でも、井の中の蛙って事もある。
世界は広いからな。
「ま、まぁ世界は広いからな! いるかもしれないさ!」
俺は言葉に詰まりながらも答える。
でも、フランは納得していないようで、無言で俯いている。
「じゃぁ、フランももうちょっと大きくなったら学校へ来たらいいじゃないか?」
「……それいいかも! そしたらお母さんもお父さんもいないもんね!」
おいおい、コラコラ。
何を考えているんだ?
ってか何歳だ?
……いや、それよりこの状況をどうする!?
親に相談? ……いやいや、こんな問題親に相談出来ない! それにそれだと、ただ単にフランが傷ついて終わってしまう。よく、考えろ……まず、一番の理想は俺よりも好きな人をフランが見つける事だ。うん。
でも、そんな人はすぐ見つからないだろうし……。
かと言ってこんないろいろ繊細に扱わないといけない問題を誰かに相談するのは……俺が考えて何とかするしかない!
……でも、今とりあえずこの場は納めるにはこれしかない。
「ま、まぁとりあえず特待生になれるように頑張れ!」
「うん!」
俺は苦肉の策で問題を先送りにした。