第八十五話 ライア君と模擬戦
俺の知る限りライア君の戦う姿は見た事がない。授業で模擬戦の時もあるけど、気功も使ってないし本気も出してない。
サラリと授業を流す程度にやっている。
でも、ライア君はベイル先輩にも一目置かれていて『眠れる獅子』と呼ばれている一面もある。
だから、実力はあるのだろう。
「どうする? 嫌ならいいけど?」
「いや是非!」
俺は元々戦うのは好きではなかったけど、ベイル先輩との一件以来もっと強くなりたいって思った。それは、いざという時なにも出来ない男にはなりたくないからだ。
前世で俺は弱い人間だった。虐められてる人を見て見ぬふりをし、絡まれている人もを見て見ぬふりをし、悪い事も悪いとも言えずに過ごしてきた。自分の身を守る為とは言え後々罪悪感に襲われた。
この世界に来て俺は力を手に入れた。でも、その力を過信していて途中から努力を怠った。つまり心は弱いままだった。
でも、俺は生まれ変わったのだ。(本当の意味でも)もう同じ過ちは繰り返さない。そうだ。俺は大切な人達を守れるようになりたい。そして、もう見て見ぬふりをするような人間にはなりたくない。その為にも今に満足する事なく努力をしなければならない。
……あんまり頑張り過ぎたらフランが嫁にいけなくなるかもだけど。
「よし、じゃあやってみようか!」
「よろしくお願いします!」
「おっ! ついに眠れる獅子が目をさますか!?」
「ライア、戦う、興味ある」
「へっ、眠れる獅子だかなんだか知らねぇけど一発で寝てしまうなよ?」
「まぁドーラ君くらいなら一発で眠らせられるけど?」
「なんだとてめぇ!?」
「さて、始めようかライト君」
「おいライア!!」
ドーラ君の叫びをよそにライア君は歩いて俺から距離を取り構えた。
ライア君ってドーラ君にも容赦ないよな……ってか、ライア君の実力はどんなんなんだろう?
俺はライア君の戦う姿を想像しながら構えた。




