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第八十二話 再出発

 「……イト君! ライト君!!」


 えっ? ここはどこだっけ? なんでライア君が……あぁそうか、俺ベイル先輩と戦ってて……負けたのか。

 俺は背中に感じる地面の冷たさ硬さと頬に走る熱い痛みを感じながら周りを見渡す。

 俺を覗き込むような形でライア君を始めジャグナル君、ドーラ君、バルテル君がいてそれを囲む形で一年の生徒がいる。

 見る限りではベイル先輩を始め他の三年生はいない。俺はしばらく気を失ってたのか。


 「良かった! 無事で良かった! 今保健室の先生呼んでるからね!」


 あぁ、そうか。だって左の頬めっちゃ痛いもんな。

 自分で治癒魔法かけてもいいけどこんなたくさんの人に見られてたんじゃ使えないな。

 それになんかこの痛みはすぐなかった事にはしたくない。

 

 「イテテテ……」

 「お、おいライト大丈夫なのか!?」

 「無茶しちゃダメだよ!」

 「ライト、無茶ダメ」

 「へっ、生温い事言ってんじゃね! さっさと起きろ!」

 「ドーラ、負けた時、運ばれた」

 「う、うるせぇ!!」


 俺は聞きなれたやりとりを聞きながらゆっくり身体を起こす。

 うん、頬が痛いのと身体中が少し重いの以外は大丈夫そうだ。付け焼き刃でも闘気を纏えてたからだろうか? 


 「負けちゃったか……」

 「ライト君……」


 もちろんベイル先輩が弱いなんて思ってなかった。初めて見た時から強いと思っていた。……でも、心のどっかで俺は転生してチートになったっていう奢りがあったのかもしれない。誰も出来ない無詠唱、膨大な魔力、知識……俺は付け上がっていたのかもしれない。


 「あれ……?」


 なんだろう? 目から熱いものが流れる。


 「おい、ライト……」

 「はは、負けちゃったよ。ベイル先輩は強いな。うん」


 なんだろう? 物凄く悔しい。これは負けたから? ……いや、違う。自分は最強だと思って努力を怠っていた事が悔しくて腹が立つんだ。そもそも俺なんて前世は中の下くらいの生活だったのに転生して自分が特別だと思ってて……俺はこの世界で人生をやり直すって決めなのに!


 「何生温い事言ってだよ? 負けたなら次勝てばいいだろ? おまえだってなんだっけ? 闘気か? あんな反則みたいなもんソッコーで使ったんだからよ! 練習すればいいじゃねぇか!」


 ドーラ君……。


 「ドーラ、意外と真面目。たまにはいい事言う」

 「だからうるせぇんだよっ!!」

 「ライト、俺たちまだ若い。これから」

 「おい、俺の話聞いてるのか!?」

 

 バルテル君……。


 「そうだぜライト! そんな弱気になってちゃ俺があっという間に抜いてやるぞ!」

 「それは無理だと思うけどね」

 「な、なんだとライア!?」

 「ライア君、ごめんね僕のせいで。でも、ライト君は凄かったよ。みんな分かってる。さっきの戦いがどれだけ凄い事だったかって事は。だから、また頑張ろ?」


 ジャグナル君……ライア君……。


 「……ありがとう、みんな」


 そうだ。一度負けたからって何もかも放り出したらいけない。それこそ、人生を……みんなを裏切ってしまう。だから、今日からまた再出発だと思おう。確かに俺はいろいろチートな部分はあるけど、それだけで生きていける程人生は甘くない。これからはまた初心に戻って頑張らないと。


 「あーーっ!! しんきくせぇ!! どっか遊びに行こうぜ!!」

 「ダメだよ! ライト君はまだ安静にしないといけないしこれから授業だし」

 「ドーラ、優しい、空気変えた」

 「はっ? そうなのか?」

 「バルテルうるせぇんだよ! ジャグナルも黙ってろ!」

 「あっ、そういう事だったのか。僕とした事がうっかりーー」

 「だぁぁぁぁぁ!!! ライアも黙ってろ!!」

 「「「「ははは」」」」


 最初、この学校に来た時はどうかと思ったけど、ここはここで俺にとっていろいろ経験になる事が多い。

 きっと神様が付け上がってた俺に出した試練なんだな。……よく考え過ぎか?

 俺はここに来れた喜びを噛み締めた。

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