第七十七話 VSベイル先輩
ベイル先輩からとてつもない威圧感を感じたかと思った刹那、次に俺の目に入ってきた光景は俺の目の前まで迫り右ストレートを繰り出しているベイル先輩の姿だった。
「くっ!!」
そのスピードは予想を超えるものだった。
俺はベイル先輩の右ストレートを寸前のところで反応し、身体をよじってなんとかぎりぎり躱した。
「ほう、これを避けるか」
ベイル先輩の攻撃を躱した俺だけど、咄嗟に無理矢理身体をよじったので、避けた反動で数歩後退する。
対するベイル先輩はさっきまで俺がいた場所に立ち止まりこちらへ向き直る。
俺はそのベイル先輩の視線に危険を察知してさらに数歩後退し距離を取る。
「す、すげぇ……」
「あれがベイル先輩……」
一年生サイドのどこからともとなく呟く声が聞こえてくる。
確かに今の一撃でベイル先輩がどれだけ化け物かってのが分かった。スピード、パワー共にジャグナル君やドーラ君やバルテル君の比じゃない。ライア君の本気は見た事もないけどそれでもここまでとは思えない。しかも、恐らくベイル先輩はまだ本気を出していない。これはまずい……。
「どうした? 怖気づいたか?」
俺を見てベイル先輩が声をかけてくる。
正直、恐いけどここで何もせずに引く事は出来ない。嫌々なった番長だけどみんな俺を信頼してくれてるし俺を認めてくれている人に失礼だ。
「いや、ベイル先輩に一発喰らわす方法考えてたんですよ」
「ふっ、良い心がけだ」
俺は普段口にしないような言葉口にして、ベイル先輩を見据えた。そして、ベイル先輩もニヤリとして獰猛な目で俺を見てくる。
さっきので分かった。後手後手ではあのスピードを前に何も出来ずにやられてしまうかもしれない。
……いや、おそらく避け続ける事はできるかもしれないけど、余裕を持って躱し続ける事は出来ないだろうし、結果、主導権を握られてしまうだろう。
それなら、あのスピードを出させないように攻撃し続けるしかない。
俺はベイル先輩の懐へ飛び込む覚悟を決めた。




