第七十六話 勘違いの上重ね
俺は周りの空気にベイル先輩の勘違いを正す事も出来ず、声を発する事も出来ずただただ前に立つベイル先輩を見据えた。
「やる気十分って感じだな。……いいぞ、どこからでも来い!!」
今なら分かる。俺が取った行動一つ一つが完全に裏目に出ているって事を。最後の勘違いを正さなかった事も、言葉も発せずただベイル先輩を見据えた事も。 よくよく考えてみると、客観的に見たらやる気十分って見える事だろう。
でも、そんな事はない! 俺は俺で取れる行動をした結果だけだ! 客観的な目線は大事だけど、この時の俺の心境は主観的に考えてくれ!
心の中で叫ぶが誰もこの声を聞く事はないだろう。……いや、俺に散々な運命を負わせている神様なら聞いて楽しんでいるかもしれないけど。
後ろでは『ほら、僕の言った通りライト君はやる気満々でしょ?』とかライア君が言っているのが聞こえる。
ライア君……君はこの状況楽しんでますね?
なにやら本当に俺の思いと正反対の方へ全部が全部行ってる気がする。俺ってやっぱどっかで選択肢間違ったのかな? 何かフラグ立っていたんだろうか? 俺は学校で一番を目指すつもりだったけど、こういう意味ではないし目的も違うし。
どこかで思考が飛んで行ってしまいそうになったのを堪えて俺はベイル先輩とどう戦うか考える。
どうする? ベイル先輩の力は未知だし……かと言ってやみくもに突っ込むのは危険過ぎる。
「どうした? 来ないのか?」
俺がどうするか思案しているとベイル先輩は不敵な笑みを浮かべて問いかけてくる。
「……」
先手必勝って言葉があるけど、作戦もなしに突っ込むには危険な相手だ。
なら、俺が取るべき行動は相手の出方を伺って対応し、活路を見出す!
「そうか……なら一撃で終わるかもしれないがこちらから行くぞっ!」
ベイル先輩が言葉を発すると前からとてつもない威圧が発せられた。




