第七十四話 いつも通りのライア君と思わぬ展開
ベイル先輩は難しい顔をしながらジャグナル君達の話を聞いていた。
ジャグナル君達の話した内容はとしては、二年生は物を高く売りつけようとしてくる事、それを断ったら力づくや魔導具を使ってやられてお金を取られるという事、そして、売りつけようとしてくる物が人によって違ったという事だった。
「……そうか。話を聞かせてくれて助かった」
ベイル先輩はそういうと椅子から立ち上がった。
「ベイル先輩はこれからどうされるんですか? 何か分かったような顔してましたけど」
ジャグナル君が言う通り、話を聞き終わったベイル先輩は何かに気づいたような素振りを見せた。
何に気づいたのか? この話の裏には何かあるのだろうか?
「……まだ確定じゃないからな。ただ、おまえ達も気をつけろ」
けど、そこを聞いてもベイル先輩は答えてはくれなかった。そして、そのまま教室を去ろうとする。
まだ確定じゃない? って事はやっぱりベイル先輩何かに気づいたのだろう。でも、気をつけると言っても二年生の目的も分からないしいつ動くかも分からないしどうしようもないな……。
「気をつけてと言われてもいつ何が起こるか分かりませんからね」
「何ぬるい事言ってるんだライト? おまえがそんなんじゃ締まらないだろ!? それにおまえみたいな化け物はそんじゃそこらの事じゃ大丈夫だろ!」
「……ドーラ君、いったい俺の事なんだと思ってるの?」
「ライト、化け物、強い」
「まぁ……そうだわな」
「みんなの言う事は分かるな。僕だってベイル先輩よりライト君の方が恐いし」
みんなの話の後にライア君がしれっと爆弾発言をした。そして、立ち去ろうとしていたベイル先輩は立ち止まってこちらを振り向いた。
えっ!? ライア君何言ってるの!? そんな事言っちゃダメでしょ!? ほら! ニヤリとしてる場合じゃないって!? ベイル先輩の顔が険しくなってるよ!?
「ほう、ライアにそこまで言わせるとは。……そうだな、この機会に一年の番長の実力を見ておいて損はないだろう。おいライト、グランドに出ろ」
「えぇーーっ!?」
ベイル先輩の目は笑っていなくてとても断れそうにない雰囲気になっている。
いったい何がどうなってこうなる!? さっきまで協力的な感じだったじゃない!? ……ライア君って悪魔の化身じゃないよね!?
そもそもいったい何の神様が降りてきたの!?
俺はこんな展開望んじゃいない!
そうしている間にもベイル先輩はグランドへ向かおうと歩いていく。
……ここでボイコットしたらどうなるだろう? ……ダメだ、最悪な未来しか想像できない……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ!
俺はなぜか戦いたくないと思っていた相手と戦う流れになって断れない雰囲気になってしまった。
……フラン、今日がお兄ちゃんの命日になるかもしれません。もしそうなったら自力で良い旦那さんを見つけてください。




