第六話 花咲く森の道
「助けてくれぇ〜!!」
中年くらいのおっちゃんが俺の姿を見て助けを求め叫ぶ。
うん、これはまさしくテンプレだな。
これはやはりイベントの一種かもしれない。
でも、普通子供を見て助けを呼ぶだろうか?
いや、呼ばなだろう。
まぁでも、ことわざに『藁をも掴む』って言うのがあるくらいだしな。
「おじさん、逃げて!」
「あ、ありがとう、坊や!」
中年くらいのおっちゃんでは俺の言葉をそのままに受け止め、俺を置いて俺の後ろへ走っていく。
おいおい……俺の事、子供って気づいていないんだろうか?
いや、坊やって言うくらいだから気づいているだろう。
って、まずはこの状況なんとかしないとな。
でも、これってまさしく……
『ある〜日、森の中、熊さんに、出会った〜』
状態だな。
もう一つの影は熊だった。
それにおっちゃんは本当にスタコラサッサと逃げて行ったし。
「グォォォォォ!!!」
俺が心の中で『森のくまさん』を奏でていると熊が突進ざまに立ち上がり右手を振り被った。
ヤバイ!
そう察知した俺はイメージで両手に魔力を集め無詠唱で身体の一部をさらに強化して受け止める。
『ズズズッ』
俺は何歩か後退したけど、熊の一撃を受け止めた。
ふぅ〜……一か八かだったけどうまくいって良かった。
身体強化だけじゃ危なかったかもしれない。
大丈夫だったかもしれないけど、それで俺の転生が終わってたら泣くに泣けないしな。
よし、お返しだ!
『ドゴォ!』
鈍い音が響く。
俺は熊の顔面に右ストレートを放ったのだ。
確か熊の弱点は顔のどっかだったはず。
まぁこれだけ強化した攻撃なら顔じゃなくても効きそうな気はするけど。
『グォォォォォ!!』
熊は雄叫びを挙げたかと思うと逃げて行った。
……うん、一緒に踊る事は出来なかったな。
まぁ仕方ない。
というか落し物した訳じゃないし踊る気もなかったし、そもそも最初に熊さんに出会ったのは俺じゃなかったしな。
「あ、ありがとうございました!」
振り返ると中年くらいのおっちゃんがいた。