第六十話 話さなければならない事
「お兄ちゃん、話って……?」
あの後、なんとかフランを退かして学校の話(もちろん番長ってのは言ってないしそれ以外の話だけど内容をかなりオブラートに包んで)で盛り上がった。
そして、家族団らんでご飯を食べてお風呂に入って寝る前にフランを部屋に呼んだ。
風呂上がりなのでフランはもちろんパジャマだ。
改めて見ると女の子のパジャマ姿ってなんだかえろいよな。
「まぁ座れ」
「ぅん、心の準備はできてるょ……」
フランはそう言ってパジャマのボタンを外そうと……違う違う!
「いやいや! そうじゃない!」
誤解だ。俺はそんなつもりで呼んだ訳じゃない。
確かにタイミングが悪かったかもしれないけど、フランを呼んで二人で話すにはこのタイミングしかなかった。
家族で話して盛り上がっているのにわざわざフランだけ呼び出すのはおかしいし。
「えっ……?」
「えっ? じゃない! 俺はおまえのお兄ちゃんだ!」
「だから、いぃのにぃ……」
「だから、ダメだ!!」
だからいいの『だから』の意味が分からない!
『だから』ダメなんだ!
「じゃあなんの話なの?」
フランは少し切なそうに問いかけてくる。
うっ、そんな目で見ないで。
なんか悪い事してる気持ちになる……。
「……魔法の話だ」
「魔法……?」
そうだ、俺がしたかった話は魔法の話、具体的に言うと身体強化の魔法についてだ。
今回これをちゃんとフランに話さないといけないと思っていた。
「フラン、実は身体強化の魔法は世間では存在しないみたいなんだ」
「えっ?」
うん、当然そういう反応になるよな。
俺だってびっくりしたし。
「世間では身体強化の魔法は気功って呼ばれてるみたいなんだ。しかもなぜかその気功は無詠唱。逆に詠唱して身体強化を行うって概念がないらしい。さらに、気功を使うのは魔法使いじゃなくておそらく騎士とか戦士と呼ばれる人達だ」
「えっ? えっ?」
そうだよね。混乱するよね。だって普通に使ってるし。
「まぁ驚くのは無理ないだろうけど、身体強化の魔法はこの世界に存在しないって訳」
「えぇーーっ!?」
そうだよね。その反応しかできないよな。
フランが『え』っていう言葉しか発しないまま俺の説明は進んでいった。
今年も一年ありがとうございました!
来年もよろしくお願いします!




