第五話 だいたいの理解にしておこう
「我が身体に宿りし、生命の源よ。我に限界を超えし力を与えよ。身体強化!」
俺が詠唱すると、身体の内側から力が湧き出る。
詠唱すると、術者が不要と思うかもしくは打ち消されるまでは持続するっぽい。
この辺りは確実ではないけど使っててそんな感じだ。
でも、詠唱して発動して維持するのにも魔力を消費する。
だから、永遠って訳にはいかないし限界がある。
まぁ俺はずっと鍛えてたしよほどの事がないと大丈夫だろうけど。
そして、気づいたのが詠唱の言葉だ。
世間一般な詠唱の言葉でなくても発動するみたいだ。
まぁ無詠唱があるくらいだからな。
要するに言葉にする事でイメージを固定化して維持するみたいな感じだろう。
『言霊』みたいな感じだろうか。
まぁ、よく言われる『思っているだけじゃなくて喋れ』って奴みたいな感じだな。
うん。詳しくは分からないしそう言う事にしておこう。
「じゃぁ、行ってくるしフランはここで待ってろ?」
「うん。お兄ちゃん気をつけて」
あぁ、妹に心配されるのっていいな……ってそんな場合じゃない。
「フラン、もし危なかったら逃げろよ? そして父さんと母さんに言って家に鍵を閉めて、内側からもーー」
「お兄ちゃん、心配してくれるは嬉しいですけど私もお兄ちゃんに鍛えられたし大丈夫ですよ? それにお兄ちゃんは何と戦うのですか?」
おっと、心配し過ぎた。
ネット小説だとなんやから正体不明でメッチャ強い黒づくめの敵とかもありそうだったからな。
「オホン! じゃぁ行ってくる!」
「行ってらっしゃい!」
俺は咳払いで誤魔化しフランに背を向け走り出す。
行ってらっしゃいか……妹に言われるといい響きだ。
世の中、妹がいて毎朝『行ってらっしゃい』って言われたら不登校はなくなるじゃないだろうか?
いや、今はそんな場合じゃない。
俺は振り返りフランに手を振り、速度を上げて二つの影に近づく。
すると、段々輪郭がハッキリしてきた。
一つは中年くらいのおっちゃんでもう一つは……あぁそう言う事か。
俺は思う事があったけど急いで駆け寄った。