第五十話 連戦
バルテルを投げた後、グランドは静寂に包まれた。
ドーラだけじゃなく、その取り巻きも静まり返っている。
俺がバルテルに……しかも、一撃ももらわずに勝つとは思っていなかったのだろう。
「はぁはぁはぁ……」
俺はジャグナル君の時と違い授業という場ではない、しかもアウェーの中で慣れない戦闘に体力よりも精神的な面から疲れていた。
まして、C組番長バルテルの戦いだ。
バルテルのパンチは空気を切り裂く程速く、そしてその威力はライア君に匹敵しそうなくらいだ。
一発も喰らわないようにというプレッシャーが俺の精神を削っていた。
しかし、身体強化魔法は解くわけにはいかない。
俺は呼吸を整えながらドーラに向き直る。
「これで次はおまえだ」
俺が言葉を発してもドーラは険しい表情で俺を見たまま何も動かない。
しかし、少しの間の後ドーラの口元が動いた。
「まぐれ……って訳じゃなさそうだな」
ドーラは呟く。
そして、ドーラは俺へ歩み寄ってさらに言葉を繋ぐ。
「どうやらおまえはコネやまぐれで特待生って訳じゃなさそうだな。あのバルテルにパワー勝負でも勝った……か。……ふははは! 面白い! 特待生……いや、ライト! 俺と勝負だ! これでどっちが学年のトップか決まる!」
「俺はどっちが学年のトップだろうがいい! ただ、おまえが俺の仲間を傷つけたり人を虐げるのなら許さない!」
「ははは! 甘いなライト! 強者こそすべてだ!」
「違う! いくら強くても一人では生きていけない! 仲間……人は協力して生きてくんだ!」
「ふっ、甘いな。戦士と賢者、協力して邪神と戦って最後はどっちが名声を得た? 最後は強い者が残る! それが現実だ!」
「名声とかそんなのは結果に過ぎない! 戦士と賢者が協力しなければ邪神は封印できなかったはずだ!」
「戯言を……ならおまえが俺に勝ってそれを証明してみろ! 俺が負けたらなんでも言う事を聞いてやる! さぁ拳で決着つけようぜ、ライト!」
そう言ってドーラは構える。
「あぁ勝ってやるさ! そして、おまえの好きにはさせない!!」
俺はそう答え態勢を整え構えた。




