第四十三話 自覚と責任
「あぁ……ゴメン」
ライア君が俺に謝ってくる。
でも、ライアは何も悪くない。
悪いのは俺だ。
ジャグナル君の事で動揺して冷静さが全くなかった。
しかも、保健室で大声で叫ぶなんて……情けない。
「いや、今のは僕が悪かった。……ゴメン」
俺は素直にライア君に謝った。
今のはどう考えても俺が悪い。
「ライト君、B組のドーラってのはライト君が思っている通りB組の番長だよ」
ライア君から出た言葉は俺が予想していた言葉だった。
でも、ならなぜ俺じゃなくてジャグナル君がやられなければいけないのか……。
「じゃあ、なんで僕じゃなくてジャグナル君が?」
「さぁ、それは僕にも分からない。でも、もしかしたらジャグナル君はライト君を守ろうとしたんじゃないかな?」
「守る……?」
「ライア! いらん事言ってんじゃねぇよ! ……ったく。ちげぇよ! ライトが平和主義とか生温い事言ってっから俺がドーラの奴を倒して代わりに学年統一しようとしただけだよ!」
ジャグナル君はそう言って明後日の方向を向いてしまった。
ジャグナル君……。
たぶんドーラって奴が俺を探しているところにジャグナル君に会って俺の居場所を聞いたんだろう。
でも、ジャグナルは俺の為に答えず自分が戦って……。
『ドン』
俺は保健室の壁を魔法なしに殴った。
拳が痛い。
当たり前だ。
本来なら殴るっては殴られるのと同様に殴られる側程でないにせよ自分も痛みがある。
でも、当然殴られる方が痛い。
ジャグナル君はこれより痛い思いをしてまで俺の事を……。
ジャグナル君はああいう風に自分の為に言っているけど絶対に違う。
そのつもりならジャグナル君はそんな事を口にしないはずだ。
「ライト君……?」
ライア君が心配そうに俺の方を見ている。
「……ジャグナル君。ジャグナル君には悪いけど僕が……いや、俺がドーラを倒す」
「ライト……」
「ライト君……」
俺には自覚が足りなかった。
成り行きとは言え戦士学校に入学していろいろあって友達という仲間が出来た事。
その仲間達が俺を認めてくれている事。
そして、その仲間達が俺のあやふやな態度によって危険に遭うということ。
そう、俺は成り行きとは言え背負う物が出来てしまった。
それはなかった事にはできない。
背負えないなら降ろすなりなんなりケジメをつけなくてはいけなかった。
俺がそれをしなかったせいで大切な仲間が傷ついてしまった。
俺はもう逃げない。
正直戦うのとかは怖いけど、俺には魔法がある。
この魔法で守れる物があるなら俺はその為に使う。
「ジャグナル君、必ず仇は取ってくる」
俺はその言葉を残し保健室を後にした。




