第四十二話 ジレンマ
「お、おぅ、ライト……ライア……みっともねぇ姿見られちまったな」
ジャグナル君は顔に包帯を巻かれていた。
そして、その包帯の上からでも分かるくらい腫れている。
保健室の先生は治癒魔法が使えるから治療後だとは思うけど、保健室の先生の治癒魔法の威力では治癒にまでは至らなかったのだろう。
俺がジャグナル君と戦った時も加減が分からず、結構な怪我をさせただろうけど次の日には元気になっていた。
まぁあの時は怪我の箇所が少なくて治癒魔法の威力も分散されなかったのもあるかもしれない。
でも、今回ジャグナル君は顔の具合を見る限り、身体中に怪我を負っているのかもしれないし治癒魔法が全体的に分散され効果が薄かったという可能性もある。
本当なら俺が治癒魔法をかけてあげれば治るだろうけど、そしたら……。
「大丈夫だよ。命に別状はないし安全にしてたら治るよ」
俺が迷っていると保健室の先生が言葉をかけてくれる。
俺はその言葉を聞いて少し安堵した。
でも、安堵した自分にも腹が立つ。
結局は自らの保身の為に魔法を使うのを躊躇ったのだ。
ジャグナル君は俺の代わりにやられたのかもしれないのに……。
「ジャグナル君、何があったんだい?」
「別に。何もねぇよ……」
ライア君がジャグナル君に問いかけたけど、ジャグナル君はそっぽを向いてしまった。
「ジャグナル先輩、誰にやられたの? そいつは僕を狙ってたんじゃないの!? なんでジャグナル君が!?」
俺はジャグナル君に詰め寄る。
自分のせいでこんな痛い目に遭ったジャグナル君を見て見ぬふりはできない。
「……」
しかし、ジャグナル君は何も答えてくれない。
くそ!
なんでジャグナル君がやられなきゃいけない!?
相手は誰なんだ!?
狙ってたのは俺じゃないのか!?
「B組のドーラ」
「!?」
ライア君が呟いた名前にジャグナル君が反応を見せた。
B組のドーラ……?
もしかして、B組の番長?
「そうか……ドーラの方か……」
「ライア先輩、B組のドーラって!?」
俺は次にライア君へ詰め寄った。
「待って待って! 話すから落ち着いて!」
俺はライア先輩の言う通りに落ち着く事が出来ない。
俺のせいで関係のないジャグナル君が……。
「ライア先輩!!」
「落ち着けライト!」
俺はライア君に呼び捨てにされて我に戻った。




