第三話 お金を稼ぐ方法とおばちゃんとクッキー
「さて、お金を稼ぐ方法を探すか」
今日はフランとは別行動である。
フランは今日近所の女の子と遊んでいる。
……俺に友達がいないという訳ではない。
まぁ時々はそれなりに遊ぶけど、精神年齢が高校生の俺にとって『賢者ごっこ』とかはやっていて恥ずかしくなるし親に心配されない程度の付き合いをしている。
それでも父さんに心配された時は、
『父さんみたいに立派な身体になるように鍛えているんだ』
って言った。
その時、父さんは感極まって泣いた。
ちょっと嘘をついて悪い事をした気分になったけど、その分将来立派な魔法使いになろうと思った。
俺はインドア派だった為、身体を動かすのは好きではない。
その分、魔法を頑張って一流にならないとな。
それに魔法使いがヒーローの世界だしモテるはず。
何とかして魔法学校に入って両親を喜ばせて、バラ色の学園生活を……それこそ一石二鳥だ。
「うーん、やっぱりこの村で稼ぐのは難しいか」
でも現実はそう甘くはない。
俺が住んでいるのは、ウェルホルム王国という国の外れにあるスーラ村といる小さな村だ。
それこそ自給自足に近い形で、父さんの作った農作物を食べたり、農作物を売った収入で必要な物を買ったりという生活だ。
村にある店は目の前に一件のみで、それこそこの店でバイトくらいしかないだろうけどそんな事ではいつまでたっても資金がたまらない。
やっぱり大きな街、それこそウェルホルム城の城下町とかでならお金になる話もあるだろう。
でもどうやって親に心配かけずに行くか……。
「おや? ライト君お腹でも空いてるのかい?」
俺が店前で考え込んでいると、店のおばちゃんに声をかけられた。
「いや、あの、えっと……」
俺は咄嗟の事に本当の事も言えず、なんて答えようか迷っていた。
「しょうがないねぇ~。内緒だよ?」
そう言っておばちゃんはクッキーをくれた。
幸運にもこの異世界の食事は前世と似たような感じなので俺としては助かった。
ただちょっと違うのは日本食と違って、ヨーロッパ系の食事だという事だ。
「ありがとう、おばちゃん!」
「どういたしまして! 友達に負けるんじゃないよ!」
俺は素直な子供を演じる。
でも、どうやらおばちゃんは俺が一人でいるのを友達からイジメられているとか思っているようだ。
変な噂になって親に迷惑かけないようにしないと。
「大丈夫だよ! 今から遊びに行くとこだから!」
「そうかいそうかい! いっぱい遊んでおいで」
こういうおばちゃんはすぐに噂話するから早めに芽を摘んでおかないとな。
「うん! おばちゃん、クッキーありがとう!」
「あいよ!」
俺はおばちゃんにお礼を言うとその場を去った。
さて、城下町に行く方法を考えないとな。
『サクッ』
おっ!
このクッキーおいしい!
バターのような香りが口の中で広がり、このサクッとした食感。
これはおばちゃんの手作りだろうか。
俺はもらったクッキーを次々に口の中へやる。
『サクサクサク……』
……うまかった!
今日は満足だ。
……って何やってんだ俺。