第三十七話 テンプレとは?
振り返るとそこには女の子がいた。
……いや、当たり前なんだけど、俺にとっては久しぶりの女の子、しかも声をかけてくれているし当たり前の光景が当たり前でない光景に思える。
女の子と話すなんてどれくらいぶりか……?
いや、実際には一ヶ月もたってないけど人っていうのは辛い環境だと長く感じしまう。
「いえいえ! 別にたいした事してませんから! それより大丈夫ですか?」
俺は努めて爽やかに、そして笑顔で答える。
きっと前世の顔でしていたら、キモがられているか引かれているかだろう。
しかし、今の俺には母さん譲りの整った顔がある!!
「あっ……」
黄緑色の髪の女の子は言葉を詰まらせる。
ヤバイ!
もしかして引かれたか!?
「あっ、もしかしてリノアったら一目惚れしちゃった!?」
「ちょ、ちょっとセリス!? な、なに言ってるのよ!?」
ふむふむ。
黄緑色の髪の子がリノアちゃんで金髪の髪の子がセリスちゃんか。
リノアちゃん……名前まで可愛い!!
「あっ、もし良かったら一緒に食事でもどうですか? お礼もしたいしリノアがーー」
「もう! セリス!! なに言ってるのよ!!!」
『キターーーーーーー!!!』
俺の心境は表すならこんな感じだ!
ついに……ついに俺にもテンプレ展開がやってきた!!
思えばテンプレ展開かと思い騙され、男まみれの生活に身を置き苦しんだ日々。
それは今日この時までの前振りとして許そう!
俺にもやっとテンプレの神様が!!
「そうだね。ちょっとくらいならーー」
「あっ!! ヤバイかも!? リノア逃げるよ!! ゴメンね! また機会があったら!」
「ちょ、ちょっとセリス!?」
「あっち! さっきの男の仲間かも! 逃げないと!」
「あっ……で、でも、助けてもらったのにーー」
「彼なら大丈夫! うん、大丈夫! 私達乙女が穢れる訳にはいかないでしょ!? 行くよ!」
「で、でも……」
「早く! 君、ゴメンね! また機会があったら!」
「ちょ、セリス!?」
「……」
俺はいろいろツッコミたいところがあったけど、とりあえず何も言葉も発する事ができず、さらに何も考える事ができなかった。
テンプレの神様……これは何のテンプレでしょうか……?
ライトの春はまだ少し先になりそうです。
この展開はテンプレなのかテンプレでないのか……。




