第三十六話 緊張の瞬間
「ひぃぃ!?」
意識を取り戻した男の反応は予想と少し違った。
てっきり、
『ちょっと油断しただけだ!』
『なかなかやるな』
とか、強がった反応があるかと思ったけど……やっぱりやり過ぎたのだろうか?
完全に怯えてしまっている。
まぁ、それもそうか。
俺が加減が分からなかった為、吹き飛ばされてしまったのだから。
このあたりの繊細な魔力のコントロールはこれから重要だな。
今まで魔法を使う事しか考えてなかったけど、これからは調節も必要になる。
こればっかりは知識というより慣れだから訓練しないとな。
「大丈夫ですか?」
とりあえず俺は相手を労わるように声をかける。
「ち、近寄るな化け物め!!」
……化け物呼ばわりされてしまった。
生きていてくれたのは良かったけどこれはこれで不本意だ。
「いや、普通の男なんですけど……」
「普通な事あるか! 近寄るな! お、覚えとけよ!?」
そう言うと男は立ち上がりダッシュで走って行った。
……うん、まるでBダッシュのようだ。
俺はもう一人の男の方へ向き直り視線を送る。
「わ、悪かった!!」
そう言うともう一人の男も走って退散していく。
あれはきっとシッポがあったら飛んでいけるだろうな。
「あ、ありがとうございました!」
「君、凄いね!」
俺がどうでもいいような事を考えていると女の子二人が声をかけてきた。
あっ、久しぶりに女の子に話しかけられた。
俺はやや緊張の面持ちで二人の方へ向き直った。




