第三十五話 反省します
「くらえぇぇぇぇぇ!!!」
男のうち一人が俺めがけて突っ込んでくる。
男のスピードはジャングル君のより遥かに遅い。
俺って意外と身体強化してなくても動体視力はいいみたいだ。
小さい時からフランと特訓した成果だな。
俺は男の動きを見ながら無詠唱で身体強化の魔法をかける。
そして、男がパンチを繰り出してきた瞬間そのパンチを半身になり躱す。
すると無詠唱の身体強化は効果が切れてしまう。
それは、避けるという動作をして次の行動を考えている間に魔力への意識が途切れるからだ。
俺は再度無詠唱で身体強化、そして右手に魔力を少し集中させ右手を拳にして、男の鳩尾へ突き出す。
「なっ……うっ!?」
「え……?」
男は身体をくの字に曲げ飛んでいく。
もう一人の男は口をあんぐりと開け、さらには目が飛び出るんではないかと言うほど目を見開き驚いている。
……やりすぎてしまっかもしれない。
右手に魔力集め過ぎてしまったかも!?
生きてますか!?
罪人になるのは嫌だ!!
「な……に、が?」
吹き飛ばされた方じゃない方の男は何が起きたか理解出来てないみたいだ。
まぁ、普通は俺みたいな男にやられるってのもそうだけど、吹き飛ばされるなんて思わないはずだしな。
ってそれどころじゃない!!
「あ、あの〜……生きてますか?」
俺は吹き飛ばした男に駆け寄り声をかける。
「……」
男の反応はない。
……これはヤバイ!!
まさか、本当に殺ってしまったのだろうか!?
殺人犯になったらフランは……父さんと母さんは……。
逃げるか!?
いや、逃げてもバッチリ目撃されているし……。
こうなったら世界を敵に回して戦って世界征服して生き延びるのか!?
……いや、そんなのは絶対ダメだ!
俺は『征服』じゃなくて『制服』が良い!
ってそんな事考えてる場合じゃない!
「うぅ……」
そう俺が脱線して変な事を思っていたら男が意識を取り戻しつつあった。
良かった!
とりあえずは殺人犯にはならなさそうだ!
でも、少し加減を覚えた方がいいかもしれない。
これは反省しないと……。
俺はそんな事を考えていた。




