第二話 詠唱と無詠唱と俺と妹
「お兄ちゃん、どう?」
「おぉ! フラン凄いな!」
あれからさらに二年。
俺は七歳になり、妹のフランも五歳になった。
今日も二人で秘密基地と言う名の空き地で、魔法の訓練をしている。
フランは魔法の才能があるのか、それとも小さい時から俺と一緒に訓練しているからか魔法を使うのがうまい。
おそらく、無詠唱で魔法を使う俺を見ているから先入観がないのだろう。
だからか、イメージ力がある。
今は風魔法をアレンジして自分の身体を浮かしている。
風魔法のアレンジと言ったけど、実はそれは定かではない。
無詠唱で出来るものはイメージで出来るから、風魔法のアレンジなのか、前世のゲームにあった重力魔法のアレンジなのか、それとも違うのか分からない。
でも、宙を浮いているのはだけは事実だ。
「へへへっ」
フランは嬉しそうにそして得意げに笑っている。
でも……。
「フラン、空飛ぶ時は格好に気をつけような」
「えっ……?」
フランはそう言って自分の服装を見直す。
そして、慌てて手でスカートを押さえた。
そう、フランの今日の服装はスカートだったのだ。
「きゃぁ!」
フランがスカートを押さえた瞬間、空から落ちてきた。
人目に触れないように、木くらいまでの高さだけど、このまま落ちては怪我をする。
「よっ!」
俺はすかさず、無詠唱で風魔法をフランを浮かすように放つ。
「大丈夫か?」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
これでスカートの中を見てしまった事はチャラにしてもらおう。
俺だって前世の記憶がある以上……というかこの世界的に考えても妹に手を出したりはしない。
それはそうと、今のフランみたいに無詠唱は魔法を放つだけなら問題ないけど魔法を維持するにはイメージを持続させる必要がある。
詠唱は詠唱の中に魔法の持続までの言葉が含まれる為、詠唱と無詠唱は使い方によってはメリット、デメリットがある。
この辺りはうまく使いこなさないといけない。
「どういたしまして」
俺はフランに微笑む。
きっと素晴らしい兄に見えるだろう。
「でも、お兄ちゃんエッチだね」
うっ、確かに見てしまったけど下心はない。
俺はあくまで妹として可愛いと思ってるだけだ。
ラブじゃなくてライクだ。
「そんな事はない!」
俺は声を荒げたけど、フランはクスクス笑っている。
……こいつ、将来魔性の女になるんじゃないだろうか?
兄をからかうとは……。
それはそうとどうやって学校に入るお金を稼ごうか?
俺の異世界転生はネット小説みたいにうまくいかないものだ。