第二十三話 秘密の共有
「……よし、行くよ! はっ!」
「おぉ!!」
俺は思わず驚きの声を上げた。
ライア君は目を閉じ意識を集中させ用意が出来るとパンチを繰り出した。
そして、そのパンチのスピードがジャグナル君を上回っていて俺と同じくらいだった。
……人は見かけによらないみたいだ。
「いや、ライト君も同じ事してるでしょ?」
「ははは」
俺はとりあえず乾いた愛想笑いで何とか場を繋ぐ。
「僕も君と一緒で身体に流れる魔力を感じてそれをイメージで力に変えてるんだ。それが気功」
それって無詠唱の原理じゃないんだろうか?
『イメージして魔力を流し込む』
それで詠唱がなくてもこの世界で実現できる魔法なら使う事が出来る。
だから、気功も魔法の一種だと思うんだけど……。
「そうだったんですね! まるで魔法みたーー」
「違うよ。気功は魔法とは違って戦士が行き着く極めみたいなものだよ。……まぁ僕が言っても説得力ないと思うけど」
そう言ってライア君は真剣な顔から一転、微笑みながら言葉を返す。
俺から言わせたら気功は無詠唱の魔法だ。
それを持続させるのが詠唱による身体強化。
でも、もしかしたらこの世界では賢者の影に隠れた勇者や戦士が賢者達、魔法使いに対する奥義みたいな感じであるのかもしれない。
魔法使いも魔法使いで魔法は放つものであり、自分や相手にかけるものではないと思っている先入観があるのだろう。
「そ、そうなんですか! でもライア先輩凄いですね! メッチャ強いんじゃないですか?」
「まぁそれなりにね。僕あんま戦うのとか好きじゃないし」
そうなんだ。
戦うのが好きじゃないと言っても強さは身体強化できる時点で一般人より上だし、戦闘経験もあるだろうから強いんだろうな。
……ちゃんと敬語で話してて良かった。
でも、一応この流れから行ったらライア君のあれ疑惑はなくなったのだろうか。
「これからも秘密を共有した者同士仲良くしようね」
……なんだろう。
言葉がやたらと気になってしまう。
何故か俺の中では警戒心が取れなかった。




